小林節・慶応大名誉教授
小林節・慶応大名誉教授

 岸田首相は会見で、国葬をする理由について、安倍元首相が憲政史上最長の8年8カ月にわたって首相の重責を担った点や、東日本大震災からの復興、日本経済の再生、日米関係を機軸とした外交といった点を挙げ、「大きな実績を様々な分野で残されたことなど、その功績はまことに素晴らしいもの」と説明。国際社会からも極めて高い評価を受けているとして、「国の内外から幅広い哀悼、追悼の意が寄せられており、こうした点も勘案した」などと述べた。

 国費で行われるならば、国会での審議が必要ではないかとの質問に対し、岸田首相は、

「国の儀式を内閣が行うことについては、内閣府設置法に明記されています。よって、国の儀式として行う国葬については閣議決定を根拠とし、行政が国を代表して行いうるものであると考えます。内閣法制局ともしっかり調整をした上で判断しているところです。そうした形で閣議決定を根拠として国葬を行うことができると判断しております」

 などと答え、松野博一官房長官も7月22日の記者会見で改めて、「内閣府設置法4条3項33号に、内閣府の所掌事務として国の儀式に関する事務に関することが明記され、国葬儀を含む国の儀式の執行は行政権に属することが法律上、明確となっており、閣議決定を根拠としてできる」などと説明した。

 しかし、これに対して小林さんは、

「内閣府設置法4条3項33号は、皇室典範(法律)25条で決まっている国葬などの儀式を内閣が執行する規定であって、内閣が元首相の国葬という新しい儀式類型を創出して良いという規定ではありません。だから、今回の閣議決定は明らかに違憲です」

 と反論。内閣府だけで決めるのなら、「内閣葬」がふさわしいとし、

「国葬なら、国権の最高機関である国会の議決が必要です。国会には、そのような大きな権力行使を根拠づける立法権と国費の支出を根拠づける財政処分権がありますが、内閣にはそれらの権限はありません。安倍政権時に、首相が内閣法制局長官人事に介入して以来、事前の違憲審査機関としての法制局は死んでしまいました」

 との見解を述べた。

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「元首相国葬法案」を提出して堂々と議場で論ずるべき