早稲田大学法学学術院大学院法務研究の須網隆夫教授
早稲田大学法学学術院大学院法務研究の須網隆夫教授

弁護士の仕事と聞いてイメージするのは、法廷に立って裁判をすることだが、仕事はそれだけではない。近年はグローバル化の流れから、企業の海外進出のサポートなど国際業務の仕事が増えており、この分野で働く弁護士が求められている。好評発売中のアエラムック『大学院・通信制大学2023』では、早稲田大学法学学術院大学院法務研究科の須網隆夫教授にその実情を取材した。

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 日本企業が海外進出をする際の橋渡しをしたり、海外の企業とのM&A(企業や事業の合併や買収)の交渉をしたり……。弁護士の国際業務と聞くとこんな姿が思い浮かぶ。

※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 スキルを持つ一部の弁護士にしかできない仕事、と思われがちだが、早稲田大学法学学術院大学院法務研究科の須網隆夫教授は、こう話す。

「広い意味で国際業務をとらえた場合、もっと多くの種類の仕事があります。留学経験や海外の弁護士資格が必要なものばかりではありません。もっと多くの人にこの分野に飛び込んでほしいですね」

 須網教授によれば弁護士の国際業務が増えていることは、この業務を多く扱っている日本の大手法律事務所の隆盛からわかります。

「Big4やBig5と呼ばれる大手法律事務所は海外にも多くの拠点を持っており、トータルで500~600人以上の弁護士が働いています。しかし、これらの事務所も1990年代は一番大きいところでも、数十人しかいませんでした」

 もう一つ注目したいのは社員として企業で働く「企業内弁護士」が急増していることだ。日本弁護士連合会のホームページによれば、統計では2001年に66人だった登録者数が年々増加し、2018年には2161人に。

「それまでは必要な時に相談を受ける顧問弁護士が中心だったことを考えると、海外業務を含む社内の仕事が増えていることが想定されます」

■中小企業の海外取引も増加 在外日本人からの依頼も

 では、国際業務の仕事にはどのような仕事があるのだろうか。

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アウトバウンド業務だけでなくインバウンド業務も