※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)
この記事の写真をすべて見る

がんの3大療法の一つである放射線治療は、その機器や技術の進歩によって治療成績が向上している。週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数・治療数の多い病院をランキングにして掲載している。ここでは、「乳がんの放射線治療」の解説記事とともに、乳がんに対する放射線治療患者数が多い病院を紹介する。

【ランキング】2020年の乳がん放射線治療の新規患者数が多い病院トップ15

*  *  *

 乳がんに対する根治的な治療の中心は手術で、放射線治療の役割は「術後の再発を予防すること」にある。手術でがんを切除したつもりでも、目に見えないわずかな病変が残っていて局所再発する可能性がある。そこで残っているかもしれないがんを放射線で叩き、根治を目指す。

 術後照射は「乳房温存療法」でおこなわれるケースが圧倒的に多い。かつての乳がん治療では病巣の大小を問わず乳房ごと切除していたが、再発させることなく乳房を残すために考え出されたのが乳房温存療法だ。国立がん研究センター東病院の秋元哲夫医師はこう話す。

国立がん研究センター東病院 放射線治療科長 秋元哲夫医師
国立がん研究センター東病院 放射線治療科長 秋元哲夫医師

「乳房温存療法は、乳房を残してがんとその周囲だけを切除する『乳房温存術(部分切除)』と、残存乳房全体に放射線をかける術後照射がセットです。術後に照射を加えると乳房内再発が約3分の1に減ることが明らかになっています。また乳房内再発を防ぐことで、生存率が向上することも示されています」

 乳房切除術(全摘術)でも、再発リスクが高いときには胸壁や周囲のリンパ節からの再発を防ぐために術後照射がおこなわれる。

 乳房温存療法の照射は通常25回で、5週間毎日通院する必要があり、患者の負担は大きい。

「近年は効果と安全性を担保しながら1回にかける線量を増やし、3~4週間まで縮める『短期照射』が標準になりつつあります。この期間をさらに短縮しようという臨床試験もおこなわれています」(秋元医師)

■高精度のIMRTを使えば合併症を減らせる可能性も

 放射線治療の合併症で最も多いのは、皮膚障害だ。照射容積が大きい場合には、多くはないものの、治療後に肺臓炎や心臓の障害が起こる可能性がある。

次のページ
今後導入が進むIMRT