日大には優れた教員がいる。意欲的な学生がいる。魅力的な授業を行っている。新しい研究テーマに挑戦している。どの学部もキラリと光るものがある。危機管理学部が名称で揶揄されるいわれはない。ここに挙げた就職実績、国家試験合格状況はその好例であろう。

 日大の学生は一連の不祥事でがっくりしているかもしれない。しかし、自信と誇りをもってほしい。学生、教員のことばを紹介しよう。

 日大スポーツ科学部3年、水泳部の池江璃花子さんは白血病から復活。「東京2020」での活躍は記憶に新しい。池江さんは、アメフトの悪質タックル問題が取りざたされ日大バッシングが起こるなか、同大学にAO入試で合格し、2019年に入学した。2021年10月、池江さんは水泳部の女子主将となり、こうコメントしている。

「この度、次年度の女子キャプテンを務めさせていただくことになりました。歴史ある日本大学水泳部の女子キャプテンになるという責任と誇りを持って、これから更に成長し、結果を出していけるように頑張りたいと思います」

 日大文理学部教授で学部長を務める紅野謙介さんは、文理学部の公式ウェブサイトでこう呼びかけた。

「本学の校歌に『正義と自由の旗標のもとに 集まる学徒の使命は重し』という一節があります。『正義と自由』、今はその言葉が空虚に響きます。『自主創造』という言葉も、ほんとうにひとりひとりが自主的、創造的であったか、従順な機械になっていなかったかを問い直さないと、無意味なスローガンで終わるでしょう。しかし、形だけになった言葉を、実質あるものにするのはやはりそこに関わる人々です。ひとりひとりは愚かで弱い、無力な存在ですが、その愚かさや弱さの自覚に立ちながら、言葉を実のある言葉にしていかなければなりません。失敗と混乱から立ち直るなかでこそ人の真価が問われる。このことを心に刻み、これから先の緊急対応に当たって行く所存です。ひきつづき注視していただくとともに、学生、教職員の皆さんが落ち着いて勉学や仕事にあたられることを望んでいます」(2021年12月6日)

教育ジャーナリスト・小林哲夫