481社の創業にたずさわったという渋沢栄一(渋沢栄一記念館提供)
481社の創業にたずさわったという渋沢栄一(渋沢栄一記念館提供)

 NHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公で「日本資本主義の父」と称される渋沢栄一。渋沢家五代目の渋沢健氏が衝撃を受けたご先祖様の言葉、代々伝わる家訓を綴ります。今回が最終回となります。

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 大河ドラマ「青天を衝け」が最終回を迎えました。去年、若手俳優の吉沢亮さんが主役になるというニュースで受けた第一印象は「あり得ない」でした。あまりにもイケメンで渋沢栄一と全く似ていない。

ただ、一年間を通して、吉沢さんの熱い演技によりイメージが馴染んできて、これから毎週「渋沢栄一」とテレビ画面で会えないことに、ちょっと寂しい想いがします。

 台本も見事でした。脚本家の大森美香さんは渋沢栄一に関する資料をかなり読み込んだということが、ストーリーの展開からわかります。私が考えている渋沢栄一の大事なシーンは、ほぼ全て、ドラマで登場していました。

 栄一が若い頃の激動の時代を主に描くドラマになると思っていましたが、コロナ禍やオリンピック開催で放映回数が少なかったことにも関わらず、栄一の明治維新以降の実業家として、また晩年の功績まできちんと描いていただいたことはうれしい展開でした。

 また、「お、そこまで見せるのか」というシーンもいくつかありました。偉人渋沢栄一の人間っぽいところも紹介してくれたので、視聴者からの親しみが高まったのではないでしょうか。

 もちろんドラマですから、演技がちょっと大げさなシーン、あるいは、その時に、そのような感じで、その人との関わりはなかったんじゃないかという場面もありましたが、大変楽しませていただいた一年であり、多くの関係者の皆様に感謝を示します。

 しかし、改めて考えてみると、現在の令和日本において明治の実業家であった渋沢栄一が大河ドラマや新一万円札の肖像など、なぜ世間からこれほど関心を寄せているのでしょうか。

 私は、その理由に現在の社会の激変が関係しているのではないかと考えています。インターネットやAIなど新たな技術の台頭により、我々の生活や仕事が激変しています。もちろん栄一の時代にインターネットやAIは存在していません。ただ、栄一が生まれた1840年は江戸時代の末期であり、第二次産業革命による当時の新しい技術の台頭で世界が激変していた時代背景がありました。

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渋沢健

渋沢健

渋沢健 シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役、コモンズ投信株式会社取締役会長。経済同友会幹事、UNDP SDG Impact 企画運営委員会委員、等。渋沢栄一の玄孫。幼少期から大学卒業まで米国育ち、40歳に独立したときに栄一の思想と出会う。

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変化を嫌う世の中に渋沢栄一の言葉