「次期首相」の有力候補、林芳正外相のお膝元が揺れている。

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 10月末に行われた衆院選の山口3区、林氏の地盤で、山口県の小松一彦副知事と山口市の幹部職員2人が公務員の優越的な上下関係を利用し、林氏の後援会に入るように勧誘したとして公職選挙法違反(公務員の地位利用)の疑いで12月24日までに略式起訴された。

 林氏は記者会見で「お騒がせしている。申し訳ない」と陳謝。自身の関与は否定した。

 山口3区は林氏と河村建夫元官房長官が自民党の公認をめぐって、激しく争った。林氏が公認となり当選、河村氏は政界引退に追い込まれた。

 その背後で山口県や市町村、自治体までもが「林推し」に奔走していたというのだ。山口県庁関係者がこう話す。

「10月末くらいから山口県警から幹部職員に対して呼び出しが次々ときました。『林氏の後援会に入るように頼んだりしていないか』『先輩から林氏の後援会にと、勧められなかったか』などと聞かれたそうです。3時間とか、長時間の取り調べを受けた職員もいた」

 山口県庁だけで取り調べを受けたのが30人以上という。他の市町村でも取り調べを受けた職員もおり、総勢100人に上るとみられる。異常事態に山口県の村岡嗣政知事が記者会見し、こう謝罪した。

「捜査は受けており、警察、検察には全面協力している。私が事情聴取を受けていることはない。捜査中なので中身は差し控えたい。県民にはお詫び申し上げたい」

 山口県は自民党王国として知られる。現在、4つの選挙区はすべて自民党が議席を確保している。

 1区は高村正彦元自民党副総裁の長男、高村正大防衛大臣政務官、2区は安倍晋三元首相の実弟、岸信夫防衛相、4区は安倍元首相と大物が並ぶ。

「これまで国政選挙で山口県は波乱がないところだった。それが山口3区に林氏が参院から鞍替えし、河村氏を引きずり下ろすという力技に打って出た。河村氏も当初、応戦したことで、大混乱。勝った林氏が将来の首相候補であることは間違いない。大半の地元の県議、市議も林氏支援に回った。県庁、市役所も応援しなければと地方議員などから言われて、林氏の後援会に勧誘したという構図だ」(前出の山口県庁関係者)

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対立激化の原因は「10増10減」