神宮外苑のいちょう並木
神宮外苑のいちょう並木

 すでに見ごろを過ぎてしまった地域もあると思うが、関東では今来週あたりが見ごろを迎える紅葉の季節である。ずっと自粛を強いられていたせいもあろうが、高尾山や日光などの有名どころは、大混雑をしているらしくニュースにもなっていた。
いったい、日本人はいつ頃から「紅葉狩り」を楽しんでいたのだろうか。

万葉集にも歌われた紅葉狩り

 歴史を紐解くと、奈良時代に成立した「万葉集」にすでに紅葉狩りを楽しむ歌がいくつも詠まれており(当時は紅葉より黄葉が主)、また源氏物語の中でも貴族の遊びと紹介されていて、桜を愛でる風習より以前に始まっていたことがわかる。それでも、これが一般の庶民へと広がっていったのは泰平の世となった江戸時代中期のことである。桜と同様、野外での飲食を含めた行楽が楽しめる平和な時代が背景にあってこそなのであろう。ちなみに梅や桜の花見では使わない「狩り」の言葉を用いる理由はいくつか考えられているが、紅葉を愛でるためには山へ分け入る必要があったこと、これが「狩り」をすると同様に見立てていたという説が有力である。

ライトアップに浮かぶ紅葉の美しさを楽しむ

 お寺の境内で盛大な桜の花見会を催した豊臣秀吉も、紅葉狩りに関しては計画したところで終わったようで、神社仏閣で紅葉を楽しめるようになったのはやはりもっと時代が下ってからなのだろう。今では、紅葉スポットとして知られる寺社は全国に広がり、この時期にライトアップしているところも少なくない。「清水寺」や「永観堂」に代表される京都では、ライトアップされるこの時期だけ夜間の拝観ができる寺社なども数多い。

 上記2寺以外でも、毎年見事なプロジェクションマッピングを見せてくれる「高台寺」、京の奥座敷に位置する「貴船神社」、朱色の弁天堂と湖水に移る紅葉が美しい「醍醐寺」などは夜8時過ぎまで門が開いていて、昼間とは違う趣きを味わわせてもらえる。

紅葉と黄葉が最盛期の場所

 日本観光振興協会の「全国観るなび」では現在の「紅葉見ごろランキング」が発表されていて、見頃はすでに関東から西へと動いているようだ。ちなみに現在の1位は八王子付近の「甲州街道いちょう並木」で12月上旬までが最盛期となっている。次いで、茨城県・竜神峡、山口県・両足寺、岐阜県・永保寺が挙げられている。両足寺は別名もみじ寺とも呼ばれるほどで、この季節は境内は真っ赤に染まる。一方の永保寺は境内の大銀杏が見どころで、朱色に色づいたもみじと黄金色のコントラストが美しい庭園を彩る。

 これとは別に10年ほど前に選定された「日本紅葉の名所100選」というものがあって、こちらはかなり大雑把な位置指定になっている(例えば「日光」「奥多摩」etc)。

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鈴子

鈴子

昭和生まれのライター&編集者。神社仏閣とパワースポットに関するブログ「東京のパワースポットを歩く」(https://tokyopowerspot.com/blog/)が好評。著書に「怨霊退散! TOKYO最強パワースポットを歩く!東東京編/西東京編」(ファミマ・ドット・コム)、「開運ご利益東京・下町散歩 」(Gakken Mook)、「山手線と総武線で「金運」さんぽ!! 」「大江戸線で『縁結び』さんぽ!!」(いずれも新翠舎電子書籍)など。得意ジャンルはほかに欧米を中心とした海外テレビドラマ。ハワイ好き

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