炭治郎が自分の新技である「ヒノカミ神楽(かぐら)」のルーツを探すために質問しても、「だが知らん!」「この話はこれでお終いだな!!」と煉獄に一蹴されている。
<待ってください そしてどこ見てるんですか>(竈門炭治郎/7巻・第54話「こんばんは煉獄さん」)
こんなふうに炭治郎は、煉獄への相談を続けようとするが、煉獄の注意は列車内にいる鬼の気配を探ることに向けられていた。煉獄が目の焦点を炭治郎にだけ集中させなかったのは当然のことで、これは煉獄の危機管理能力の高さを示している。柱と一般隊士との意識の違いである。
■魘夢の能力・煉獄杏寿郎の実力
しかし、煉獄がこれほど注意をはらっていても、彼らは魘夢の血鬼術(けっきじゅつ=鬼の特殊能力)に翻弄されてしまう。慎重な性格の魘夢は、自らは鬼殺隊の前になかなか姿をあらわさず、手先である人間を使って、煉獄たちを夢の中へと引きずりこんだ。
それでも煉獄と魘夢の実力差は歴然としていた。コミックス7巻の説明によると、「通常 眠り鬼の術に落ちている時 人間は体を動かすことができない」はずなのだが、煉獄は攻撃されそうになった時、「動けるはずのない術の中で」動くことができている。
煉獄の剣技、集中力の高さ、能力から考えても、彼が魘夢に直接とどめをさすことは十分に可能だった。だが、煉獄はそれを炭治郎たちに任せた。一体なぜか。
■煉獄杏寿郎の戦い方
高速で走る列車。8両編成の長い車両。日輪刀を振りづらい狭い通路。200人の人質。魘夢は列車全体を支配しており、車内のいたるところに人間を襲う触手を発現させていた。煉獄には乗客全員の命を守る、という責務があった。それゆえ、煉獄の判断は早かった。
<俺は後方5両を守る!残りの3両は黄色い少年と竈門妹が守る 君と猪頭少年は その3両の状態に注意しつつ 鬼の頸を探せ>(煉獄杏寿郎/7巻・第60話「二百人を守る」)