元中日の浅尾拓也 (c)朝日新聞社
元中日の浅尾拓也 (c)朝日新聞社

 今シーズンも多くの選手が自由契約となっているプロ野球だが、その中で驚かされた選手の1人が今村猛(広島)である。2009年のドラフト1位で入団。プロ入り2年目から早くも頭角を現すと、中継ぎ陣のエース格として2016年からのリーグ3連覇にも大きく貢献している。11年という実働年数はプロ野球選手としては決して短くはないが、今年でまだ30歳という年齢を考えると、起用法によってはもっと活躍できた可能性があったと感じるファンも多いはずだ。

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 そして今村以上に短命に終わったリリーフ投手も少なくない。過去10年を振り返ってみて最も印象に残る選手と言えばやはり浅尾拓也(中日)になるだろう。プロ入り2年目の2008年に44試合に登板して12ホールドをマークして頭角を現すと、翌年以降はセットアッパーに定着。2010年、2011年と2年連続で最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得。特に2011年は79試合、87回1/3を投げながらも防御率0.41という圧倒的な成績を残し、中継ぎ投手としては史上初となるシーズンMVPにも輝いている。

 ちなみに今年ルーキーながらクローザーとして防御率0.86をマークした栗林良吏(広島)の投球回が52回1/3だったことを考えると、この浅尾の数字がいかに驚異的であるかがよく分かるだろう。しかしこの2年間の登板過多が影響してか翌年以降は故障で成績が低下し、完全復活ができぬまま2018年に引退している。実働11年で歴代3位となる200ホールドをマークしているためそれほど短命とは言えないかもしれないが、その6割以上の125ホールドが2009年からの3年間に集中しており、ピークの期間が短かったことは間違いないだろう。

 浅尾の後に登場した中継ぎエースで短命に終わった選手となると佐藤達也(オリックス)の名前が挙がる。プロ入り2年目の2013年に40ホールド、防御率1.73をマークすると、翌年は42ホールド、防御率1.09とさらに成績を伸ばして2年連続で最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得している。しかしそれ以降は度重なる故障もあって年々成績は悪化。現役最終年となった2018年は一度も一軍登板がなく、わずか7年で現役生活を終えている。現役引退後も球団に残って広報を務めているが、選手と並んでテレビ中継に映る度に現役時代の豪快なピッチングを思い出すファンも多いはずだ。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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