奨学金の返済は社会問題の一つとされている(写真はイメージ/Getty Images)
奨学金の返済は社会問題の一つとされている(写真はイメージ/Getty Images)

 経済的格差を埋めて教育機会を得るのに重要な奨学金。低利息の「投資」とはいえ、大学卒業後の返済に苦しむ社会人の問題もクローズアップされている。そんななか、今年4月、企業が社員の奨学金返済を支援するための新しい制度がスタートした。制度を導入した企業の声は。

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 324.3万円。2018年調査で、独立行政法人日本学生支援機構の奨学金を利用した人の平均借入総額だ。毎月の平均返済額は1万6880円。平均14.7年間にわたり返済を続けている(労働者福祉中央協議会「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査(2019)」から)。

 日本学生支援機構によれば、返還を要する人は2019年末時点で443.8万人に上る。さらに2020年時点で、3カ月以上返済を延滞している人が約15万人(全体の2.9%)いるという。

 こうした状況を受け、同機構は今年4月、返済を支援する新しい制度を導入した。奨学金を借りている社会人が勤務する企業による、奨学金返還支援制度(以下、代理返還制度)だ。

 これまでも、奨学金の返済分を給与に「上乗せ」して、社員の奨学金返済を支援する企業はあった。だがこの場合、給与が増えることになるため、所得税などの負担が増える。つまり、上乗せした分に課税されてしまうというデメリットがあった。一方、代理返還制度では、社員の代わりに企業が直接日本学生支援機構に返済分を送金することができるため、非課税となる。

■すでに100社以上が制度を導入

 代理返還制度を導入した企業は8月時点で119社に上る。なかでも大規模な返還支援を行っているという企業に話を聞いた。

 プレスリリース配信サービス「PR TIMES」を運営するPR TIMES(東京都港区)は、今年4月から代理返還制度の利用を始めた。同社では「U30奨学金返還サポート制度」という独自制度を導入。30歳未満で年収600万円未満の正社員を対象に、年1回、6月に月額5000円×12カ月=6万円を代理返還する。

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さらに毎月の給与に1万円上乗せ