登山道の分岐では道標や地図を必ず確認し、万が一、道に迷ったときは元の道を引き返す勇気が大切だ。

 しかし、疲れていると登山道を登り返すことを躊躇してしまい、そのまま下り、途中で怪我をして動けなくなり行方不明になってしまうケースが後を絶たない。

■体力不足で山を下れない

 ちなみに、大山での遭難の場合、原因の48%(20年)は「体力不足」である。

「大山登山は初心者や子ども、高齢者まで、登山を楽しむことができますが、そのためには、体力を考慮すること」(伊勢原警察署)と、体力の重要性を強調する。

「体力不足による疲労から下山できず、救助を通報するケースも少なくない」(伊勢原警察署)

 さらに、歩行中にバランスを崩してしまい、「滑落」「転倒」による遭難も多く発生している。

「雷ノ峰尾根の登山道はガレ場(岩屑や石が広がる場所)で足元が悪いため、滑落が多い。『男坂』は勾配がきつく、疲労から足がおぼつかず、足元を滑らしたり、つまづいたり、踏み外す事故が発生しています」(伊勢原警察署)

 一方、奈良県の大峰山周辺は修験道の道場としても知られ、鎖を頼りに岩壁を登るようなところもある。

「登山道には険しい部分もあります。メジャーな道では、道迷いより滑落が多い」(間瀬田さん)

 山で遭難しないためには日ごろの体力づくりのほか、事前にルートや時間などの計画を綿密に立てること。さらに天候や装備品の確認が大切となる。

 登山計画書をあらかじめ警察などに提出しておくことも重要だ。計画書があれば、本人や家族などから救助要請があった場合、捜索範囲を適切に絞ることができ、迅速な救助活動へとつなげられる。最近は都道府県警のホームページから記入するだけで、登山計画書を出すことができる。

 そして、「当日は、万全な体調で登山をしていただきたいと思います」(伊勢原警察署)

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)