和田アキ子(C)朝日新聞社
和田アキ子(C)朝日新聞社

 9月2日にリリースされた和田アキ子の新曲「YONA YONA DANCE」が話題を呼んでいる。和田アキ子の公式YouTubeチャンネルで公開されている同曲のMV動画は、10月21日時点で745万回を超える再生回数を記録している。TikTokでもこの曲を使った投稿が数多くあり、空前の盛り上がりを見せている。

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「YONA YONA DANCE」のプロデュースを手がけたのは、ロックバンドのフレデリックだ。「オドループ」という楽曲をTikTok上でバズらせたこともある人気バンドである。「YONA YONA DANCE」は彼らの持ち味を生かした中毒性の高いダンスチューンである。

 この曲が流行っている理由は、楽曲自体の良さに加えて、それを自分のものにして歌いこなしている和田の歌唱力の高さにある。彼女のソウルフルな歌声が、リズミカルな楽曲と見事な調和を見せている。相反するように見える2つのものが、それぞれの個性を生かしたまま融合することで、今まで誰も聴いたことがないような傑作が生まれた。

 和田アキ子は、1968年に「星空の孤独」で歌手デビューして以来、半世紀以上にわたって芸能界の最前線に君臨してきた。テレビでは後輩の芸人たちが彼女のパワハラ的な言動や酒癖の悪さを面白おかしくネタにすることが多いので、彼女を頭の固い旧世代の人間のように思っている人も多いかもしれない。

 だが、芸人たちが和田のことをさんざんネタにするのは、彼女がまさに「笑って許して」くれる器の大きい人物だからだ。和田が本当に狭量な人間であれば、自分をネタにすることを許してくれるはずもない。

 和田は暴力的な父親に厳しく育てられ、歌手になってからも先輩にいびられたりしていた。男性のように体が大きい和田は、先輩の女性歌手から「男がいるから着替えができないわ」と嫌みを言われたり、わざとお茶をこぼされたり、靴にマジックで「バカ」と書かれたり、といった陰湿ないじめに遭っていた。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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和田アキ子の新曲がヒットした理由とは?