二階派候補と公認争いをしている選挙区のシミュレーション(作成・吉崎洋夫)
二階派候補と公認争いをしている選挙区のシミュレーション(作成・吉崎洋夫)

 細野氏と地元の自民党県連は長年、対立。県連は吉川氏支援でまとまっているという。だが、二階氏が幹事長時代の昨年11月、静岡5区に入り、「勝つか負けるか分からない(候補者)ではだめ」「細野さんなら間違いない、彼を支援する」とぶち上げた。

 だが、土壇場で頼みの二階氏は幹事長の座を去り、無役になった。

一方の吉川氏は総裁派閥、岸田派に属する。

◆二階派と近い小池新党の動きは?

「無所属で戦うわけで、非常に厳しい。覚悟はできています。来るべき戦いに臨みます」

 細野氏は出馬の方針に変わりないことを自身のSNSで明かした。前出の自民党幹部がこう語る。

「静岡5区でも細野氏の後ろ盾、二階氏が表舞台から消えた。吉川氏のバックは岸田首相、甘利明幹事長だ。吉川氏の公認は確実だ。細野氏は小選挙区で勝つしかないが、自民党でも野党でもない立ち位置では難しい選挙になるだろう」

 二階派の苦境はこの2選挙区以外でもある。群馬1区では二階派の中曽根康隆衆院議員(比例当選)と安倍元首相が実質的に率いる細田派(清和政策研究会)の尾身朝子衆院議員が激しく公認争いをしている。ちなみに前回の衆院選で尾身氏の得票は92641。野党共闘が成立していれば、計97387票となり、逆転される可能性もある。

「岸田氏がうまく二階氏を幹事長から追い落としたね。公認争いの相手は岸田派や細田派でしょう。二階派は圧倒的に不利になり、負け組になり、たぶん、公認は取れないだろう。そうなった場合、良好な関係である東京都の小池百合子知事の国政政党『ファーストの会』に入れて出馬させるのも選択肢でしょうね。事実、細野氏は前回、希望の党で小池氏とともに戦いました。二階氏ならやりかねない」(二階派幹部)

 ご祝儀相場とならず、支持率で伸び悩む岸田政権。新執行部はどのような決断を下すのか。(AERAdot.編集部 今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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