WEリーグが成功するためのカギは? (c)朝日新聞社
WEリーグが成功するためのカギは? (c)朝日新聞社

 女子プロサッカーリーグ=WEリーグは、まずまずのスタートを切った。11クラブの開幕戦でスタジアムを訪れた観客は27,252人で、1試合平均2,477人となる。今は、新型コロナウイルス蔓延防止の観点から、緊急事態宣言下の開催地もあり、入場者数にも上限が設けられていた。そんな中での数字だから価値はある。

 2011年の女子ワールドカップ・ドイツ大会で優勝した直後には、2万人前後の観客を集めた試合もあった。今年、 INAC神戸レオネッサに復帰した星川敬監督は、2011年当時、大観衆の前でI神戸の指揮を執っていた。WEリーグのファーストゲームに集まった4,000人を超える観客数の価値を尋ねると、こんな答えが返って来た。

「2011年当時は、女子W杯の優勝で、日本中の人たちが『新しいものを見てみたい』と来てくれた。今は、女子サッカーの存在が定着していて、しかもコロナ禍の中で4、5千人に来ていただいたのは、当時の2万人と同じように価値の高いものだと感じます」

 10年前は、I神戸の試合に万を超す観客が集まる中、代表選手の少ないチームの試合では、成績上位でも1,000人を切るケースもあった。明らかに観客の中心は「なでしこリーグの試合を見に来た人」ではなく、「世界一になったなでしこジャパンの選手のプレーを見に来た人」だった。

 このWEリーグでは、第3節までの15試合全てが観客数4ケタを死守している。そこが大きな違いだ。

 11のクラブが、それぞれ総力を挙げて、集客に努めた結果だろう。

 WEリーグファーストゲームで4,000人を超える観客を集めたI神戸は、理想と現実のギャップを認識して、手を広げ過ぎることなく、声が届きそうな層から着実にアプローチ。ホームタウンでも、クラブハウスや試合会場の周囲など、アクセスが容易な地域から手をつけていき、自由にできるお金が少ない高校生以下の学生は、入場無料とした。

 スタジアムでは、関西地区のチームに所属するサッカー女子の姿もあった。WEリーグの歴史的開幕に立ち会った彼女たちは、高瀬愛実のWEリーグファーストゴールを目に焼き付けるとともに、自分と年齢の近い高校生FW・浜野まいかの活躍に刺激を受けたはずだ。

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現状、観客の入りは上々