BABYMETAL
BABYMETAL

 しかし一方で、膠着した市場はゆるやかに衰退していきます。ヘヴィメタルも例外ではなく、レジェンド的なアーティストほど「変えるべきもの」と「変えてはいけないもの」がわかっている。世界各国でその形を柔軟に変えて発展してきたように、メタルは硬いようにみえて、実は柔らかい。その思考は、日々の仕事や生活の知恵にもなる“普遍性”があるのではと思いました。今こそ、伝統を継承しながらも柔軟に形を変える「メタル的思考」を見直してみよう、というのが本書の趣旨です。

――そういう意味で、BABYMETALはKOBAMETALさんの思考を具現化して、新しい市場を開拓してきたように思います。10周年を迎えた今、BABYMETALは世界で活躍できるアーティストへと成長しました。この間、変えずにこだわってきた“コア”はどこだったのでしょうか。

 シンプルに言えば「ブレない心」と「自分たちを信じる力」です。いかにオンリーワンであり続けるか、自分たちのオリジナリティーに自信を持ってユニークな存在でいられるか、それにこだわってきました。

 もともと、一般的なメタルのバンドをやりたくてBABYMETALを始めたわけではありません。いかに速く曲を弾けるか、激しく叩けるか、を追及してきたわけでもない。「メタル×ダンス」というコンセプトで、新しい音楽の形をつくっていくことが目的なので、そこは絶対にブレてはいけない部分でした。

 テクノロジーの進化とともに、ミュージシャンのパフォーマンスも日々変化しています。楽器や機材の進化によって、ステージパフォーマンスも従来のライブというスタイルに加えて配信のような新しいスタイルも登場しました。特にメタルというジャンルはデジタルとの相性が良いと感じています。そのような進化とともに変化していくことはメタルにとってもBABYMETALにとっても必要だと考えています。

――メジャーデビューして知名度が上がるにつれて、一部のメタルファンから「BABYMETALはメタルなのか」という論争も巻き起こりました。まさにメタル・エリートの人たちを中心に起こった議論だと思いますが、サウンドがメタルかどうかということに縛られず、「メタル的」な思考を体現しているという意味で、BABYMETALはメタルである、と言えるのではないでしょうか。

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「封印」は急に決まったことではない