高市早苗前総務省と安倍晋三前総理(C)朝日新聞社
高市早苗前総務省と安倍晋三前総理(C)朝日新聞社

 確かに、高市氏の話は歯切れがいい。9月20日の自民党青年局・女性局主催の公開討論会でも冒頭の決意表明では、「海外からサイバー攻撃が1日に13億6600万回にまで達しております。皆様の命や財産守り抜く」と力強く訴えた。

 そして高市氏のセールスポイントともいえる、憲法改正では他の3人の候補が「国民投票」にポイントを置く中で、「今の憲法では、技術革新、安全保障環境など社会の変化に追いついていない。時代にあった憲法にしていく」と改憲が前提ともとれる持論を展開した。高市氏の急上昇に本命視される河野氏、岸田氏の両陣営も警戒感を滲ませる。

◆効果がイマイチだった小石河連合

 河野氏は人気の高い小泉進次郎環境相、石破茂元幹事長を応援団にして「小石河連合」を結成。党員票で大差をつけて、議員票でも岸田氏と互角に戦い、勝利するという戦略だった。

「小石河連合の効果がイマイチだ。安倍高市連合の進撃で党員票をかなり取られている」

 こう語る河野氏陣営の国会議員は、渋い表情だった。また、国会議員票でリードしていると報じられた岸田陣営は、河野氏と決選投票で一騎打ちを想定していたが、高市氏の猛追という想定外の事態に慌てた様子だ。岸田派の国会議員はこう話す。

「うちの課題は党員票だ。アベノフォンで高市氏が党員票をかなり獲得しているのは間違いない。現在、岸田氏が2番手という甘い考えではダメだ。ツイッターでも、『高市2位』というフレーズがトレンドになっている。今日も支援している議員が党員票を固めるため、電話作戦をしている」

 総裁選で4人の候補が並ぶと、必ずと言っていいほど出る質問の一つが安倍前総理の負の遺産である、森友学園への国有地払下げ事件と「桜を見る会」前夜祭の疑惑への対応だ。

 9月18日に行われた日本記者クラブ主催の討論会で高市氏は、「あれだけ長く国会審議で説明されている。本人は虚偽と思って答弁されたのではございません」と再調査を否定していた。

「安倍氏のアキレス腱は、森友学園の事件と、今も検察が再捜査している桜を見る会前夜祭の疑惑だ。安倍氏が高市氏をしゃかりきに応援しているのは、2つの疑惑を追及しないと半ば、明言しているからでしょう。河野氏や岸田氏も再調査には消極的だが、安倍氏は信用していない様子。安倍氏が率いる清和会に次いで、有力派閥の麻生派、二階派が今回は自主投票です。高市氏が勝てば、安倍院政になる可能性もあり、余計に力が入っていると思う」(前出の田村氏)

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霞が関が最も嫌がる総理総裁は?