株式市場が好調だ。米国市場は史上最高値を更新し、日経平均株価も新政権による経済対策への期待などから3万円台を付けるなど30年ぶりの高値水準にある。

 一方、コロナ下での株高をもたらしてきた米国連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和策の縮小が年内にも始まると言われるなか、今後市場はどうなるのだろうか?

 日米の金融機関で取締役を歴任し、現在は東証1部上場企業のCFOで、『金融のプロが実はやっている最もシンプルで賢い投資の結論』の著者でもある北村慶氏に聞いた。

*  *  *
■GDPを上回った株式市場の時価総額

 足元、世界的に株価だけではなく、不動産や金・暗号資産(仮想通貨)などの資産価格も全般に堅調に推移しています。

 しかし実は、この状態が「バブル」状態であることを示唆するデータもいくつか出ています。

 その最も端的なものは、世界の株式市場の時価総額が世界のGDP(国内総生産)合計を突破した、という事実でしょう。

 世界中の株式市場に上場しているすべての企業の時価総額の合計は、2020年12月に史上初めて100兆ドル――1京(けい)500兆円――を超えました。

 一方、世界の名目GDPは、国際通貨基金(IMF)の予想では、2021年は91兆ドル(9550兆円)に急回復すると見込まれています。

 株式市場が付ける企業の価値の総和は、コロナからの回復を織り込んだ世界のGDP合計をすでに上回っているのです。

 2008年の国際金融危機(日本では、「リーマン・ショック」と言われています)の直前の株高局面でも、時価総額がGDPを上回ることはありませんでした。

 さらに、実態経済と比べるべき対象は、株式の時価総額に銀行融資残高や債券発行残高などを加えた金融サービス全体の規模である、と考えることもできます。

 SIFMA(アメリカ証券業金融市場協会)によれば、2019年の社債の発行残高は105.9兆ドルであり、株式(95兆ドル)と合算した資本市場の規模は200兆ドルを超えています。これに銀行融資を加えると、金融市場のボリュームは全世界のGDPの3~4倍にも達していると言われています。

次のページ
バブルの温床、過剰流動性