菅義偉首相は9月9日、新型コロナウイルス対策として東京など19都道府県の緊急事態宣言を30日まで延長することを首相官邸で発表した。就任からわずか1年で退陣することとなったが、「コロナとの闘いに明け暮れた日々だった」とサバサバした表情で語った。

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 17日に告示、29日に投開票される自民党総裁選への不出馬表明で、すっかり影が薄くなってしまった菅首相。そこへ突然、9月末に菅首相がアメリカを訪問し、米国のバイデン大統領と会談する予定であることが報じられた。自民党幹部がこう話す。

「退任表明で無力化している菅首相が訪米して何になるのか?コロナ禍ということもあって、外遊回数が歴代首相と比べてかなり少なかった。『もしや政界引退の花道じゃないのか』と党内がザワつきました」

 菅首相の退陣のきっかけになったのが、8月22日投開票の横浜市長選だった。側近の現職閣僚、小此木八郎氏の圧勝と見られていたが、立憲民主党などが擁立した山中竹春市長に投票終了直後の午後8時に当確がマスコミ各社で打たれる惨敗だった。

「小此木氏というエースを出して、地元の横浜でぼろ負けした菅首相は、果たして次の衆院選挙で勝てるのかという声も出ている。お膝元の横浜でもダメ出しされ、惨めな姿をさらす可能性がある。このまま政界引退した方がいいと言う議員が結構、います」(自民党の閣僚経験者)

 菅首相の地盤、衆院神奈川2区は横浜市西区、南区、港南区。横浜市長選で3つの区で山中氏が獲得した票数は約6万8千票に対し、小此木氏は約5万票。横浜市長選では自民党の一部が当時、現職だった林文子氏を推した。林氏が3区で獲得したのは、約3万票。これを小此木氏の約5万票と合計すれば、8万票で候補者を一本化していれば、勝てる計算にはなる。

 横浜市長選では何度か、菅首相自身が地元入りして小此木氏の応援演説をすることも検討されていた。

「菅首相は本当に行きたくて『いつ、横浜に入るのか』『行けば陣営も引き締まり勝てる』と強く希望していた。だが、あまりに市民たちの菅首相への批判が強いことから、入れば逆に小此木氏の票が減りかねないと周囲が進言して、止めた」(官邸関係者)

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神奈川県連幹事長も「応援しない」