感染急拡大のなかで始まった2学期。写真は岡山市立三門小の児童たち (c)朝日新聞社
感染急拡大のなかで始まった2学期。写真は岡山市立三門小の児童たち (c)朝日新聞社

 8日の全国の新型コロナウイルス感染者数は約1万2千人。前週の約2万人からは大きく減ったが、引き続き多くの感染者が出ている状況だ。デルタ株は子どもや若年層にも感染が広がっており、文部科学省の調査によると夏休みの延長や臨時休校を行った公立学校は1割超に及んでいる。しかし文科省は学校について、「全国一斉の臨時休業は考えていない」と慎重な立場だ。国が一斉休校に踏み切らないのには、昨年の休校時に子どもたちを襲ったさまざまな「問題」があるという。教育行政の専門家に話を聞いた。

【表】感染リスク高いのは断トツ「レストラン」 場所ごとの感染者増加データ

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 文科省は8月27日に学校を臨時休校する際の判断基準を全国の教育委員会などに通知した。学級内で感染が広がっている可能性が高い場合は5~7日程度の学級閉鎖、さらに学年内で感染が広がっている可能性が高い場合は学年閉鎖、学校内で感染が広がっている可能性が高い場合は学校全体を臨時休業にするなどの基準を示している。

 各地域、各学校の状況に合わせて対応することを要請しており、あくまでも全国一斉の臨時休業はない、という姿勢だ。

 こうした方針を示した背景には、一斉休校の「ダメージ」があるという。

「昨年の全国一斉休校は最悪の選択肢だったと見ています」

 こう話すのは日本大の末冨芳教授(教育行政学)だ。教育関係者の間では、昨年、安倍晋三首相(当時)が実施した全国一斉休校について、否定的な評価が広がっているという。末冨教授は「昨年の一斉休校の爪痕はあまりにも深く、同じことはもうできない」という。

 休校期間中、子どもたちに様々な弊害をもたらした調査結果が明らかになっている。

 国立成育医療研究センターが7~17歳(2591人)を対象に昨年4月~5月にかけて行った調査によると、「コロナのことを考えるといやな気持になる」、「最近集中できない」、「なかなか寝つけなかったり、夜中に何度も目が覚めたりする」などのストレス反応・症状を示したのは全体の75%にも及んだ。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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