ワクチン接種によって免疫を獲得しても、ウイルスはその免疫を逃れるような変異を獲得してしまう可能性があります。イギリスの緊急時科学助言グループ(SAGE)は、ワクチンが効かない新型コロナ変異株が出現する可能性を、高い確信をもって推測していました。これは十分に想定されることだと思います。

――新型コロナが、季節性インフルエンザの水準になるなど、収束する日は来るのでしょうか。
 
 ウイルスが勝手に弱毒化していく可能性は低いでしょう。そのため、少なくとも数年単位で弱毒化し、自然に収束していく可能性はきわめて低いでしょう。ワクチンから逃れる変異が出てこなくなり、世界中の7~8割の人にワクチンが行き届いたら、ウイルスは増殖する方法がなくなり、また重症化するリスクも減っていきます。そうなると、季節性の風邪と同じ扱いになると思います。ウイルスは残っていても、みんなが免疫を持っている状況になれば、収束となるでしょう。

 ただ、新型コロナは、ワクチンによって重症化が抑えられたとしても、インフルエンザに比べ、味覚障害や嗅覚障害、記憶障害など様々な後遺症が残る可能性が高いとされます。ワクチンを接種して重症化は抑えられたとしても、後遺症に対してはまだ把握されていません。

――日本でも3回目のワクチン接種が検討されていますが、有効性を教えてください。

 ワクチンのブースター接種は有効です。むしろ、高い効果を求めるよりは、持続性だと思います。イスラエルでは、今年の頭くらいにワクチンを打った人たちが、再び感染しだしました。ワクチンの効果が長持ちしない可能性があるため、もう3回目の接種に進んでいます。ただし、3回目を打ったところで、半年しかもたなかったら、また4回目を打たないといけないわけです。先進国だけ3、4回を打つよりも、途上国で1回、2回を打ったほうがいいのではないかという議論もあります。

(聞き手=AERA dot.編集部・岩下明日香)