今年の甲子園の主役は阪神園芸? (c)朝日新聞社
今年の甲子園の主役は阪神園芸? (c)朝日新聞社

 今夏の甲子園の主役は阪神園芸だ。

 雨に祟られてしまった第103回全国高等学校野球選手権大会。選手以上にグラウンド整備の裏方が注目される事態になった。

 五輪明け、ようやく訪れた球児たちの夏はグラウンド外のことに左右されている。新型コロナウイルス感染で辞退する学校が出る非常事態に加え、連日にわたる雨のため順延続きとなった。新学期やプロ野球等の差し迫った日程との睨めっこ状態の中、阪神園芸の活躍が例年以上に目立っている。「最高のコンディションでプレーしてもらいたい」という強い意志を感じさせる仕事ぶりは、試合同様に甲子園の風物詩となっている。

「開始前に雨が強く降っていれば普通は順延です。阪神戦なら天気予報の段階で中止になったはず。無理をすればグラウンド自体の痛みや消耗が激しくなるし、選手のケガも心配。でもギリギリの日程の中で悠長なことは言っていられない。そして球児たちに満足してもらえるグラウンドを作りたい。究極の板挟みの立場でプロの仕事をしている。称賛に値します」(阪神担当記者)

 大会5日目(8月17日)の第1試合、大阪桐蔭(大阪)と東海大菅生(西東京)の戦いは7対4の8回表一死の時点で降雨コールドゲームとなった。優勝候補の大阪桐蔭を東海大菅生が追い上げる展開の中でのゲームセットだった。試合序盤から雨が降り続き、6回からは特殊な砂をマウンド、打席周辺などに入れたが天候には勝てなかった。グラウンドには水が浮き、内野ゴロが途中で止まってしまう状態。32分間の中断後、審判団の協議で大阪桐蔭の勝利が決まった。

「さすがに無理でした。序盤の雨足なら阪神園芸の技術があれば問題なかった。しかし中盤以降の激しい降り方ではどうしようもない。水を吸引、濡れた部分を削り、土や砂を素早く入れる。できることすべてをやってくれたけどダメだった。中断時間も整備員控室からは怒号混じりの指示の声が聞こえていた。最後まで諦めなかった。コールドゲームになって一番悔しかったのは阪神園芸のはずです」(関西地区テレビ局スポーツ担当)

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阪神の選手たちも感謝