東京五輪の卓球で新型コロナウイルスの対策ルールとして、「手で卓球台を拭かない」、「(ボールや手に)息を吹きかけない」が適用される。

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 このルールに戸惑いを隠せないのは選手たちだ。中国のスポーツメディア・新浪体育など複数のメディアによると、この感染防止対策を適用したルール下で中国代表が練習試合を実施したところ、16年リオデジャネイロ五輪の男子シングルス金メダリストで、今大会2連覇を狙う中国の馬龍が苦戦。シングルス1試合、ダブルス1試合で台を手で拭き、計2枚のイエローカードを受けたという。

 スポーツ紙の卓球担当記者はこう予測する。

「多くの選手は卓球を始めた幼少期から手で卓球台を拭いたり、手に息を吹きかけるのがルーティンになっている。これらが禁止になると、リズムが狂って集中力が削がれたり、ストレスを感じると思います。五輪で番狂わせが起こる可能性も十分にあります」

 このルール適用に対して賛否両論の声があるが、他にもコロナ感染防止の観点から、試合中に自粛を求められる可能性があるのが、「叫ぶ行為」だ。世界ランキング2位の張本智和は得点を取る度に「チョレイ」と叫ぶことで有名だ。勝負所で点を取った際は、絶叫に近い大声になる。

「張本は自分を鼓舞するために叫んでいるが、コロナ禍で神経質になっているので審判も自粛を促すことはあり得る。相手の選手からクレームが来ることも想定し、『チョレイ』を封印して戦うことも考えなければいけないと思います。ただ張本の中では調子を上げるリズムのようになっているので、フラストレーションはたまるかもしれませんが…」(前出のスポーツ紙記者)

 昨年1月に開催された全日本選手権では、この懸念が奇しくも的中する形になってしまった。張本は男子シングルス準々決勝で及川瑞基に1-4で完敗した。前日に3試合戦った上、1時間17分と長丁場のフルゲームだったためスタミナが切れてしまったのだ。

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「チョレイ封印」でも金メダル