■パトリック・シック(チェコ)

大会前の欧州での評価は最低クラスだったものの、完成度の高いパフォーマンスでオランダを破って準々決勝に進出し、今大会のサプライズとなったチェコ。そんな“伏兵”の絶対的エースがシックだ。190cm近い身長を誇りながらスピードに溢れ、繊細なタッチでDFを翻弄。また独特の間合いと懐の深さで相手を飛び込ませず、シュートチャンスも逃さない(チェコが奪った6ゴール中、5ゴールが彼のもの)。スコットランド戦の45mロングシュートは、今大会のベストゴールだろう。UEFAが発表するプレイヤーランキングでも堂々の2位。大きく評価を上げた1人だ。昨夏にレヴァークーゼンへ完全移籍したばかりだが、さらなるメガクラブへの移籍もあり得るかもしれない。

■ミッケル・ダムスゴー(デンマーク)

目の前でチームメイトが心肺停止に陥るという悲劇を体験。あまりの精神的ショックに、サッカーどころではなかったはずだ。初戦を終えたカスパー・ヒュルマン監督も認めている。グループリーグでは2連敗を喫した。それでも、迅速で勇敢な対応で仲間の命を救ったばかりか、第3戦の奇跡的な勝利で決勝トーナメントに進出。ノックアウトステージではさらに成熟し、29年ぶりにベスト4へ駒を進めた。今大会のデンマークは、全世界からこれ以上ないほどの称賛を受けるべきだろう。そんなチームで躍動するブレークスターが、ダムスゴーだ。若くして“デンマークのアザール”などと注目を集めたアタッカーはサンプドリアで充実のシーズンを送った後、EUROでも印象的な活躍を見せている。左右両サイドやトップ下を器用にこなし、高いテクニックの他、スプリントを繰り返せる走力は大きな魅力。2ゴール1アシストと結果も残している。奇跡的な復活を目指すクリスティアン・エリクセンに憧れてきた21歳は、その先輩と同じく偉大なキャリアを歩んでいけるだろうか。バルセロナなどの関心も聞こえているが、今夏の去就にも注目だ。

(文・三上凌平)