人魚みたいな存在の設定や描き方についても、矛盾を指摘する声はあったが、それを言い出すとキリがない。「プリキュア」シリーズ最新作の「トロピカル~ジュ!プリキュア」(テレビ朝日系)に出てくる人魚・ローラも従来のイメージとは違うので、こちらも自由でよいのではないか。

 とまあ、そんなドラマであるため、演者も変にさめていると浮いてしまう。だから石原も綾野も、大真面目にファンタジーを演じていて、その本気度が心地よかった。見る側も本気でハマってしまおうと思えたのは、それも大きい。

 石原についていえば、そのハスキーボイスがときに息苦しくも感じられるが、人魚みたいな存在が陸では息苦しいのも当たり前だ。「高嶺の花」(日本テレビ系・2018年)で天才華道家を演じたときよりは全然気にならなかった。

 また「相変わらずのぶりっこ演技」などと批判する声もあったが、いくつになってもかわいいのが美人女優というもの。結婚しても、彼女は健在だと感じられたのがうれしい。

 なお、今期は他に、川口春奈や吉岡里帆も恋愛ドラマに主演した。川口の「着飾る恋には理由があって」(TBS系)にせよ、吉岡の「レンアイ漫画家」(フジテレビ系)にせよ、人生観などが違う相手との「ギャップ」を埋めようとしていく物語で、主演女優のけなげなかわいさがうまく引き出されていたものだ。

 そんな2作品と比べても「恋ぷに」におけるギャップは大きく、こういうものをやりきるにはスタッフの力業も不可欠だ。こんなコロナ禍の時代だからこそ、夢のある物語をという思いもあったのだろう。とにかく演者からも作り手からも、無邪気さというか、子どもや若者が学芸会や文化祭に取り組むような良い意味での稚気というものが感じられた。

 もっとも、こんな時代だからこそ、現実に寄り添うような物語を、という人だっている。そのあたりを目指したのが「まめ夫」こと「大豆田とわ子と三人の元夫」(フジテレビ系)だろう。個人的には、せりふや演出に「どうだ、すごいだろ」的なドヤ顔っぽさが感じられ、あまり好きになれなかったが、あれにハマった人は逆に「恋ぷに」をバカにしていそうなイメージがなくもない。

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現代の「多様性」を体現したドラマ