以前、外国人投手には英語で話しかけるのかと、村上に尋ねたことがある。すると「『ファイト!』とか簡単なことしか言ってないっス」と笑っていたが、救援投手のスコット・マクガフは「ムラカミの英語は上手だよ」と証言している。もしかすると、今はさらに上達しているかもしれない。

 高津監督の言うように時間はかかるにしても、村上が近い将来にチームリーダーとなるのは間違いないだろう。既にバットでは、不動の四番打者としてチームをけん引している。セ・パ交流戦開幕前の成績は打率.309(リーグ4位)、13本塁打(同1位)、31打点(同3位)。5月5日からはサードで固定されている守備でも成長を感じさせ、神宮球場に視察に訪れた侍ジャパンの稲葉篤紀監督も「素晴らしいですね。飛距離もそうだし、スイングスピードもそうですし。サードの守備機会も非常に冷静にこなしているし、いい選手になりましたね」と熱視線を送っていた。

 ところが5月25日に交流戦がスタートすると、29日のオリックス戦(京セラドーム)まで5試合連続でノーヒット。翌30日の同カードで再びセ・リーグのホームランダービートップに並ぶ14号2ランを放ち、久しぶりに「自分のスイングができました」とコメントしたが、チームは3点のビハインドをひっくり返しながら、8回に救援陣が崩れて逆転負けを喫した。

 それでもヤクルトは交流戦2カードを終えて3勝3敗で、12球団中4位タイ。セ・リーグでは貯金4で、阪神巨人に次ぐ3位につけている。村上自身、交流戦を前に「いい形でここまで来てるので、交流戦でしっかり勝って、もっともっと上を目指したいなと思ってます」と話していたとおり、リーグでさらに上位を目指すためにはこの交流戦での戦いが重要になる。

 打線に関しては、開幕から1カ月経ったところで合流したオスナとドミンゴ・サンタナの新外国人コンビがいい働きをしているが、カギを握るのはやはり四番バッター。1週間ぶりのアーチが、常々「僕が打って勝ちたいなと思ってます」と話している男のバットに、再び火を付けるか──。(文・菊田康彦)

●プロフィール
菊田康彦
1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004~08年『スカパーMLBライブ』、16~17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。

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