「毎日が地獄のようだった」親の“連れ去り”体験者が語る 海外では違法化している国も (1/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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「毎日が地獄のようだった」親の“連れ去り”体験者が語る 海外では違法化している国も

藤岡敦子dot.
写真はイメージ(GettyImages)

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 将棋の橋本崇載八段が 4月、引退を発表した。その理由は妻との子どもの親権をめぐるトラブルなどによる体調不良だったことから、別居・離婚時の「子どもの連れ去り」や面会交流、親権のあり方が改めて関心を集めている。

【写真】東京・新橋で演説する橋本崇載さん

 これらの問題をめぐり裁判で争うケースも年々増えているが、父母の紛争に巻き込まれる子どもたちはこの状況をどう見ているのか。聞こえてくるのは「とにかく争わないでほしい」「子どもが親を知る機会を奪わないで」などの切実な声だ。

 4月中旬、橋本氏が東京・JR新橋駅前で開いた演説会。その会場に足を運んだ一人が、子どもの頃に母から「連れ去り」にあい、今は片親環境の子どもが偏見なく生きられる社会を目指す活動を行うランさん(仮名・37)だ。

 ランさんが懸念しているのは、子どもが置かれている状況だ。「同じような問題は多く生じています。有効な対策が打たれていない現状を見ると、子どもが置き去りにされているようにしか見えません。親と違って、子どもは『大変な離婚をして片親環境になった子ども』を長ければ20年近く続けることになる。その大変さの違いをもっと理解してほしい」と訴える。

 ランさんが母に「連れ去られた」のは12歳の時。荷物をまとめるよう突然母に言われ、向かった先は遠く離れた知らない男性の家だった。父が大好きだったランさんは「お父さんに会いたい」と何度も訴えたが、そのたびに母に殴られたという。家の中では喧嘩がたえず、母と義父との仲は急速に悪化。義父はすぐに暴力をふるった。

「義父の連れ子も含めた6人家族でした。母と義父の喧嘩の原因は僕の養育にかかるお金で、『お前にいくらかかっていると思っているんだ』『お前のせいで金がない』と双方から責められる。存在価値を否定され、しかもその喧嘩を自分が止めなければ眠れない状態で、毎日が地獄のようでした」

 同居が始まって8カ月後、母に再び荷物をまとめるように言われ、家を出た。義父に見つからぬよう旅館を転々として3カ月程暮らしたという。ランさんにとって2度目の「連れ去り」だった。親の都合で何度も環境を変えられることにうんざりし、強く反発した。その後、祖母のいる北陸地方で暮らすことになったが生活は貧しく、精神状態が不安定な母との日々は過酷なものだった。

「同意なく『連れ去る』ことは、子どもにとって心理的な虐待につながることを分かってほしい。慣れ親しんだ家を突然離れ、片方の親や友達とも別れて環境も変わる。『連れ去り』は子どもに良くないとの認識をまず持ってほしい」とランさんは強調する。さらに、片親環境の問題点は「主に2つある」とランさんは指摘する。金銭的な貧困と人的資源の乏しさだ。

「片親環境はサポートしてくれる人的資源も比較的少ないことが多く、子どもが何か問題を抱えた時につなげる先がないことが多いのです。離婚後も両親に会えていればこれらの問題は大きく変わると思います。モラハラやDVの裏には精神疾患や発達障害があって治療が必要な場合もあるんです。公的機関を含めて『会わせることはできない』との判断が出れば、子どもも仕方がないと思うかもしれない。子どもがそんな親でも会いたいと思うのか、その時にはどう対処するかを考えるのが本来の大人の責任だと思います。一方の親に会えません、というよりも、『両親に会ってサポートを受けている』と言える子の方が生活上問題が少ないし、片方の家で虐待が起こった時にも逃げられるわけでいいはずなんです」


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