ユダヤ人とアラブ人の共同での戦争反対デモ。この様子はあまり報道されない(エルサレム市内、ニシム・オトマズキン提供)
ユダヤ人とアラブ人の共同での戦争反対デモ。この様子はあまり報道されない(エルサレム市内、ニシム・オトマズキン提供)
「ハンド イン ハンド」というアラブ人とユダヤ人子弟が通う学校。私の二人の子どもも通っている(ニシム・オトマズキン提供)
「ハンド イン ハンド」というアラブ人とユダヤ人子弟が通う学校。私の二人の子どもも通っている(ニシム・オトマズキン提供)
アラブ人とユダヤ人が学ぶ国立ヘブライ大学(ニシム・オトマズキン提供)
アラブ人とユダヤ人が学ぶ国立ヘブライ大学(ニシム・オトマズキン提供)

 迅速な予防接種キャンペーンのおかげで、イスラエルのコロナ危機は終わりました。しかし私たちは今、再び異なった挑戦に直面しています。

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 過去2週間、イスラエル国家とガザを実効支配するイスラム組織ハマスの間で再び破壊的な戦闘が勃発しました。幸いなことに今は停戦となりましたが、この11日間の戦闘で、4000発以上のロケット弾がガザからイスラエルの都市に向けて発射され、その一方で、イスラエル空軍はガザのハマス施設に向けて空爆を行い、建築物に激しい破壊を引き起こし、周辺にいた女性や子どもを含む200人以上の死者を出しました。

 同時に、イスラエル国内のユダヤ人とアラブ人の間の衝突は、ユダヤ人とパレスチナ人の混在する都市、特に歴史的な都市のアッコとヤッファ、イスラエルの国際空港近くのロッド市で暴徒化し、そこをたまたま通りかかったユダヤ人とアラブ人、双方に対する攻撃でピークに達しました。警察は大量の人員を出動させて暴動を制御し、秩序を維持しようと24時間態勢で警戒に当たりました。

 私の見立てでは、現在の対立は必ずしもパレスチナのアラブ人とイスラエルのユダヤ人の間ではなく、二つの対立する陣営です。つまりユダヤ人とパレスチナ人が並んで平和に暮らすことを望む人々とそれに反対する人々との争いです。

 反対の側には、多くの国でテロ組織とみなされているハマスがあります。ハマスと同様にパレスチナ人との和解に反対する極端なユダヤ人過激派グループもあります。ハマスもユダヤ人過激派も、ここの土地は自分の土地であり、ユダヤ人とパレスチナ人が平和に暮らせないようにできる限りのことをすると主張しています。

 ハマスは2007年からガザの人々を暴力的に支配し、他国から受け取った寄付金を武器に投資し、イスラエルの市民を標的とするテロ攻撃を続けています。またユダヤ人の極右組織は積極的にパレスチナ人の居住地に入植して、地元パレスチナ住民に対して暴力的に振る舞い、パレスチナ人がその土地を離れることを望んでいます。

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Nissim Otmazgin

Nissim Otmazgin

〇Nissim Otmazgin(ニシム・オトマズキン)/国立ヘブライ大学教授。トルーマン研究所所長を経て、同大学人文学部長。1996年、東洋言語学院(東京都)にて言語文化学を学ぶ。2000年ヘブライ大学にて政治学および東アジア地域学を修了。2007年、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修了、博士号を取得。同年10月、アジア地域の社会文化に関する優秀な論文に贈られる第6回井植記念「アジア太平洋研究賞」を受賞。2012年、エルサレム・ヘブライ大学学長賞を受賞。研究分野は「日本政治と外交関係」「アジアにおける日本の文化外交」など。京都をこよなく愛している。

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ユダヤ人とアラブ人の混合学校が誕生