普通の「過失致死傷罪」は懲役刑の定めがないが、重過失致死傷罪は「5年以下の懲役か禁固、または50万円以下の罰金」と定められており、より罪は重い。つまり、うっかり事故ではなく飼い主に「重大な過失」があったと認定されたケースが多いということだ。

 ペットが逃げたというだけで、具体的な被害や損害がなければ刑事、民事ともに飼い主に責任は生じないという。ただ、今回のアミメニシキヘビは人に危害を与える恐れがある「特定動物」に当たり、さらに飼い主が許可を得ずに木製のケージに変更していたことから、ちょっと事情が違うようだ。

「特定動物とは簡単に言えば『危険な動物』ですので、動物愛護法で飼育について細かなルールが定められています。飼育施設を変更する際は都道府県知事の許可が必要で、違反者は『6カ月以下の懲役か100万円以下の罰金』となります。また、飼育施設が安全基準を満たさないと判断されれば、飼育許可が取り消されます。今回のケースで言えば、木製ケージへの変更の許可を得ていないこと。さらに、ヘビの大きさからすれば木製のケージでは安全ではないと考えられることから、刑事罰に加え、飼育許可の取り消しを受ける可能性もあると思います」(渡邉弁護士)

■住民による飼い主への慰謝料は…

 一方、恐怖の中で暮らしている住民側は、飼い主に対し慰謝料などを求めることは可能なのか。渡邉弁護士は、

「近所に住んでいる方はとても不安は大きいと思いますし、外に出るのが怖いという方もいるでしょう。ただ、ヘビの逃走によって『行動が規制』されてしまったとしても、飼い主に対して慰謝料などの損害賠償請求ができるかは検討が必要です。行動規制が事実上のものか、法令などで規制されたものか。住民たちの『受忍限度』を超えているものなのか、行動が規制されることが法的保護に値するか、などの問題を検討しなければなりません。慰謝料請求が当然にできるということにはならないと思います」

 と慎重な見方を示す。

 そもそも、こんなに大きなヘビを民家で飼育できることに驚いた人も多いだろう。渡邉弁護士は「飼っているヘビが逃げたという事案は意外と多いんです」と指摘したうえで、こう指南する。

「動物愛護法の規定では、行政側は飼い主宅への立ち入りなど、とても強い権限を持っています。もし近所に危険な動物を飼っている人がいて不安を感じたら、行政側に連絡して、監督権限を行使してもらった方が良いと思います。ルールを守って飼っているかまでは近所の人は把握できませんから、行政とつながることが一番だと考えます」

 一刻も早い発見を祈るばかりである。(AERA dot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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