現場周辺には注意を促す紙も(c)朝日新聞社
現場周辺には注意を促す紙も(c)朝日新聞社
2016年9月、東京都江戸川区の小岩警察署で押収されたアミメニシキヘビ。全長約1・5メートルだった(c)朝日新聞社
2016年9月、東京都江戸川区の小岩警察署で押収されたアミメニシキヘビ。全長約1・5メートルだった(c)朝日新聞社

 横浜市戸塚区のアパートからペットとして飼われていた巨大ヘビが逃げ出し、神奈川県警などが捜索しているがいまだ見つかっておらず、周辺住民は恐怖の中での生活を強いられている。飼い主は法的責任を問われないのか、住民たちは飼い主に慰謝料などを請求できるのか。専門家に見解を聞いた。

【かつて押収された今回とは別のアミメニシキヘビの写真はこちら】

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 逃げているのは、20代の男性が飼育していた体長3.5メートル、体重13キロのアミメニシキヘビ。人に危害を加える恐れのある「特定動物」に指定されている。毒は持っていないという。
 
 男性は行政側の許可を得て、2017年からこのヘビを飼育。だが、報道によると、逃走の際は許可を得たガラス製のケージでなく、別の木製ケージにヘビを入れていた。このケージの変更については、許可を得ていなかったという。

 今回の騒動を受け、日本蛇族学術研究所が運営するジャパン・スネークセンター(群馬県太田市)がツイッターでアミメニシキヘビの動画を公開し、その性質を解説している。

■自分の頭より大きな獲物飲み込む

 それによると、アミメニシキヘビは成長すると9メートルほどになる世界最長のヘビで、大型の個体は牛や人を飲みこんだという報告もあるという。基本は夜行性だが、昼間でも活動していることがある。性格は比較的おとなしいものの、驚いたり嫌なことをされ続けると攻撃態勢に入り、近づくと攻撃してくるという。自分の頭より大きな獲物を飲み込むことができるため、今回逃げている3.5メートルのサイズでも、乳幼児や小型・中型の犬やは注意が必要としている。

 実際に国内でも人身事故の例はある。

 2012年に茨城県牛久市のペット飼育場で60代の男性が死んでいるのが見つかり、現場の状況から飼育していた6.5メートルのアミメニシキヘビに襲われた可能性が高いと報じられた。

 アパートの周辺住民には不安が広がり、近隣の小学校は児童を集団で登下校させるなど対応に追われている。うっかりミスではすまされない事態だが、飼い主の法的責任はどうなるのか。

 ペットのトラブルに関する裁判に数多く携わってきた渡邉アーク総合法律事務所の渡邉正昭弁護士によると、

「逃げたペットが人を襲って死なせてしまったりケガをさせたら、当然ながら飼い主に民事上の賠償責任が生じますし、刑事上でも過失を問われることがあります。飼い犬が逃げ出して人を死傷させたという事案は数多くありますが、その過去の判例を見ると、重過失致死傷罪に問われたケースが散見されます」

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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