ワクチン集団接種会場視察などを終えて取材に応じる菅義偉首相。左奥は河野太郎行政改革相 (c)朝日新聞社
ワクチン集団接種会場視察などを終えて取材に応じる菅義偉首相。左奥は河野太郎行政改革相 (c)朝日新聞社
新型コロナウイルス感染症対策本部の会合に臨む和泉洋人首相補佐官 (c)朝日新聞社
新型コロナウイルス感染症対策本部の会合に臨む和泉洋人首相補佐官 (c)朝日新聞社

 16日、政府は「まん延防止等重点措置」を埼玉、千葉、神奈川、愛知に適用することを決めた。そんななか、編集部が入手した自民党の内部資料で、ワクチン接種が当初予定より大幅に遅れている実態がわかった。

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 AERA dot.編集部は、14日に開かれた自民党の新型コロナウイルスに関するワクチン対策プロジェクトチームの会合で配られた資料を独自に入手した。そこには、ワクチン接種が遅々として進んでいない状況が記されている。

 資料によると、ワクチン総接種回数(4月12日時点)は、医療従事者等約480万人のうち、1回目の接種を終えた人が約112万人、2回目が約56万人だった。割合にすると、それぞれ24%、12%しか終わっていない計算になる。高齢者3600万人を対象にしたワクチン接種も12日から始まったが、こちらに至っては初日の接種回数が全国でわずか1139回にとどまっている。

 接種を行う現場からは、政府のチグハグな対応に不満の声もあがる。

「なぜ私たち医療従事者の接種が終わっていないのに、高齢者の接種が始まるのか、理解に苦しむ」

 こう話すのはある大学病院に勤務する医師だ。感染対策をしているといっても、1日に何十人もの患者にワクチンを接種するとなると、医師らの感染リスクは高まる。そうならないための医療従事者の優先接種だったにもかかわらず、大半の医療従事者が未接種の状況で高齢者の接種も始まってしまったのだ。

 自治体も対応に追われている。茨城県日立市では高齢者用のワクチンの一部を医療従事者用に転用することに決めた。ワクチンが十分に届いておらず、15日時点で医療従事者の接種率は12%にとどまっているためだ。その他の自治体でも高齢者用のワクチンを転用する動きが出ている。

 なぜこのような事態になっているのか。政府関係者はこう語る。

「高齢者も打つことにしたのは、選挙目当て以外の何物でもない。また、現場が混乱している中で河野大臣が『自治体の接種体制が整うのにあわせてワクチンを供給している』など接種の遅れを現場に転嫁するような発言をし、現場の怒りを買っている。責任感のなさの表れでしょう」

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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日本は「ワクチン後進国」