海とくらしの史料館所蔵の大型剥製標本「チョボリン」調査時の様子。奥にはマンボウの小型個体の剥製も見える。(C)澤井悦郎
海とくらしの史料館所蔵の大型剥製標本「チョボリン」調査時の様子。奥にはマンボウの小型個体の剥製も見える。(C)澤井悦郎

50万円のマンボウの剥製を持ち上げて写真を撮ることができるコーナー。(C)澤井悦郎
50万円のマンボウの剥製を持ち上げて写真を撮ることができるコーナー。(C)澤井悦郎

2021年5月1日~10日に開催される企画展「マンボウ展」の告知。(C)海とくらしの史料館
2021年5月1日~10日に開催される企画展「マンボウ展」の告知。(C)海とくらしの史料館

 鳥取県境港市と言えば、漫画家・水木しげるの代表作『ゲゲゲの鬼太郎』で有名な妖怪の町ということはご存じの方も多いだろう。しかし、境港市の公式ホームページを一度見て欲しい。公式ホームページのキャッチコピーには、「さかなと鬼太郎のまち」と書かれている。そう、境港市は魚類も推しているのだ。

【写真】50万円のマンボウの剥製はこちら

 その魚類の中でも特に推しているのがマンボウである。公式ホームページをもう一度よく見て欲しい。ふるさと納税のボタンにニッコリ笑顔のマンボウの絵が描かれている。これは単なる背景の絵ではなく、実は鬼太郎に次ぐこの市のシンボル的存在なのだ。

 境港に観光に来る多くの人は、おそらく水木しげるロードの最終地点である『水木しげる記念館』が目的だと思う。しかし、そこまで来たら、もう少し足をのばしてほしい場所がある。それが『海とくらしの史料館』だ。

 海とくらしの史料館は「日本最大級の魚のはく製ミュージアム」と銘打っているように、酒蔵を改修した二階建ての館内に、魚介類の剥製が所狭しと並んでいる。海とくらしの史料館に入ってとりわけ目を引くのが、巨大なマンボウの剥製だ。この剥製、当たり前のように普通に展示されているが、実は世界的に貴重な標本である。今回はそんな海とくらしの史料館の巨大マンボウ剥製についてお話ししよう。

■日本最大のマンボウの剥製

 私の知る限り、日本にある全長2.5 m以上のマンボウ属の大型剥製標本は4つである。北九州市立自然史・歴史博物館、アクアワールド茨城県大洗水族館、ミュージアムパーク茨城県自然博物館、海とくらしの史料館にそれぞれ1つずつ常設展示されている。私の研究チームがこれらの巨大剥製を詳細に調査するまで、これらの種はすべてマンボウMola molaと考えられていた。

 しかし、調査の結果、北九州市立自然史・歴史博物館、アクアワールド茨城県大洗水族館、ミュージアムパーク茨城県自然博物館の剥製はマンボウではなく、ウシマンボウMola alexandriniであることが明らかとなり、海とくらしの史料館の剥製だけが唯一正真正銘のマンボウと判明した。よって、海とくらしの史料館の剥製は、日本最大のマンボウの剥製となったのだ。ちなみに、マンボウの日本最大記録はこの剥製よりさらに大きいが、それについてはまた別の機会にお話ししようと思う。

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