自民党の憲法改正案に緊急事態対応を盛り込む方針だという。

<「自民党は、日本を戦争するような国にしていくのか」という批判だ。そのため、自民党が目指す憲法改正項目の緊急事態対応は大災害時に限定することにした。こうしたときだからこそ、衆議院・参議院の憲法審査会は、コロナウイルス対策に連動して、緊急事態対応をどうするかを議論すべきではないか>

 安倍前首相を一貫して支援してきた下村氏だが、著書では批判も展開していた。

<GDP至上主義だった経済も、コロナによって待ったなしの変革が求められている。多くの問題が露呈したが、アベノマスクもその一例だろう。さんざん批判されはしたが、あれも経済の効率性を優先した新自由主義の弊害である>

 終章には安倍前首相と下村氏の対談が約23ページにわたり、収録されている。対談のコーディネーターだった元自民党政務調査会調査役の田村重信氏はこう話す。

「下村さんは安倍さんが第1次政権で退任後もずっと、支援をしていた。
本当の安倍人脈だ。安倍内閣で文部科学大臣を2年8か月も経験し、現在は
政調会長という党三役。解散総選挙、秋の総裁選の前に本を出すのは、政治家なら誰もが政権構想、公約の本だとピンときます。私も数多くの自民党総裁に仕えました。そういう生っぽい本には、元首相で自民党総裁という立場にあった安倍さんはあまり出たくないというのが本音でしょう。しかし、対談は二つ返事でOKでした。最大派閥、清和研が下村さんを次期総裁選の候補として重視していることが、よくわかります。安倍さんの肝いり政策だったアベノマスクをあえて批判しているのも下村さんの覚悟の現れです」

 一方の安倍前首相は対談で下村氏のことをこう持ち上げている。

<(2度目の)総裁選挙に出るかどうか迷っていた私の背中を早い時期から押して下さった、一人が下村さんでした。下村さんの後押しは大変な力になりました>

 そして、安倍前首相は自身の経験から下村氏に以下のようにアドバイスしている。

<アフターコロナの国家ビジョンが必要だ>

 解散総選挙ともう一つの「関ケ原」、自民党総裁選は水面下で激しい争いが展開されている。(今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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