■共催の最大の懸念はコロナ

 最大の懸念事項はやはり新型コロナ感染対策だった。もしチームの選手や関係者から感染者が出れば、試合そのものが中止になる。実際に、BリーグとVリーグともに、今シーズン、いくつもの試合が中止に追い込まれている。

 企画を進めている途中も、昨年12月にサントリーサンバーズはコロナ感染者が出て、試合中止やチーム活動が一時休止となった。共催に暗雲が垂れこめたが、櫻井さんは年が明けた1月に、改めてサントリー側に「どうでしょうか?」と確認した。来シーズンに延期になる可能性も覚悟していたが、返答は意外にも「やりましょう」。これが最終的なゴーサインとなった。

「この企画をするなら、失敗できないと考えていました。そこで以前、サンバーズさんに『今シーズンは見送って、来シーズンにしましょうか』と話したところ、逆に『こういうのは早いほうがいい、やるならやりましょう』と返してもらった。心強かったですね」(櫻井さん)

 数々の壁を乗り越えて実現した今回の共催。当日は、大阪エヴェッサのマスコットやチアダンスチーム「BT」が、サントリーサンバーズの試合の応援に登場したり、サントリーサンバーズの選手が大阪エヴェッサの選手入場に一緒に登場するなど、互いに協力し、観客を楽しませた。

「時間がなくて、今回はコラボ商品をあまり出せず、演出も限られていましたが、まずは共催が実現ができたことが重要です」(櫻井さん)

 サントリーの吉田さんも共催の経験から学ぶことがあったという。

「お客さんが会場に来るには、何かきっかけがあり、絶対に仕掛けがある。エヴェッサさんの演出も参考になりました。今後はチケットのデータ分析などをして、お客さんが求めているものをわれわれも勉強したい。(サントリーサンバーズの)お客さんが楽しんで、リピートしてもらえるようにしたい」

 最後に、櫻井さんは今後の展望をこう話した。

「大阪府の人口は約880万人。周辺の商圏でも500万人ほどのマーケットがあります。この広さを考えると、お互いがお客さんを引っ張り合うのはナンセンスです。せっかく大都市圏のチームなのだから、お互いにやれることをやっていきたい。バスケとバレーで2試合も面白い試合が見られて、演出も楽しめる。サンバーズさんもどんどんわれわれを使ってほしいし、逆にわれわれも使わせていただきたい。共に上がっていきたいですね」(櫻井さん)

 正直、この共催がアナウンスされた時、客の奪い合いにつながるのではないかと危惧していた。特にVリーグのファンが、Bリーグの観客を巻き込んで楽しませる魅力的な演出を肌で味わったら、ファンを乗り換えてしまうのでは、と心配した。

 しかし、そんなことは完全に杞憂で、素晴らしい共催だった。(取材・文=大塚淳史)