2021年3月17日時点で飼育されていた背鰭・臀鰭短縮の奇形マンボウ。他の個体と形態や行動を見比べてほしい(C)澤井悦郎
2021年3月17日時点で飼育されていた背鰭・臀鰭短縮の奇形マンボウ。他の個体と形態や行動を見比べてほしい(C)澤井悦郎
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志摩マリンランドが発行していた雑誌『志摩マリンランドクォータリー』。いただいた資料は年季が入っていた(C)澤井悦郎
志摩マリンランドが発行していた雑誌『志摩マリンランドクォータリー』。いただいた資料は年季が入っていた(C)澤井悦郎
入館者を迎える巨大マンボウモニュメント。マンボウの英名はOcean sunfishで太陽に縁がある(C)澤井悦郎
入館者を迎える巨大マンボウモニュメント。マンボウの英名はOcean sunfishで太陽に縁がある(C)澤井悦郎
飼育員のオススメ本として、筆者の著書『マンボウのひみつ』を挙げていただいたので、記念撮影。館内にある飼育員手作りの解説も味があって良い(C)澤井悦郎
飼育員のオススメ本として、筆者の著書『マンボウのひみつ』を挙げていただいたので、記念撮影。館内にある飼育員手作りの解説も味があって良い(C)澤井悦郎

 2021年1月29日、新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言が一部の都道府県で再発令されている中、各メディアから三重県志摩市の賢島にある志摩マリンランドが、2021年3月31日をもって営業休止することが発表された。突然の発表に驚きと偲ぶ声が多く挙がり、志摩マリンランド公式Twitterの発表ツイートは3.1万リツイートされた。余談だが、漫画『ゆるキャン△』に志摩リンというキャラクターがおり、志摩リンランドと誤認する人も続出した。

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 コロナによる来館者減少という追い打ちはあるものの、もともと水族館は大量の海水を扱う施設であるため老朽化が早く、『新版水族館学(東海大学出版会,2010年)』によると水族館の寿命(継続年数)は平均36.6年とされている。それを考えれば、同館は長生きした方だろう。水族館の老朽化が問題になった時、リニューアルする資金があるかどうかで、継続か閉業か、水族館の命運は分けられる。

 惜しくも同館は閉業の道を歩むことになったが、皮肉なことに、営業休止を告知してからは閑散期であるにも関わらず、開館前には人が並ぶほど連日賑わいをみせている。「最後だから行ってみよう」という雰囲気を好まないという声もあるが、どう捉えるかは人それぞれだ。私も営業休止の告知がなければ、今回足を運ぶことはなかっただろう。

 志摩マリンランドはマンボウを複数飼育している世界的に見ても稀有な水族館である。マンボウ研究者である私は、棄てられるマンボウ資料があるなら私の方で保存したいと同館に申し出、先日訪問してきた。今回は私がおススメする同館のマンボウ的魅力をお伝えしよう。

■志摩マリンランドとマンボウ飼育の歴史

 志摩マリンランドは大阪万博の開催に合わせて1970年3月18日に開業し、先日ちょうど51周年を迎えたばかりだ。開業当時は今よりも小規模で、いくつかエリアが増設されて現在の形になった。現在は「マンボウの泳ぐ水族館」と銘打っているが、開業当時にはまだマンボウは飼育されておらず、別エリアにあるマンボウ館もまだ建っていなかった。

 しかし、いただいた資料を見ていると、生態が謎だらけのマンボウを飼育してみたいという飼育員の強い好奇心があったようで、1981年7月7日にマンボウ館が完成する数年前から何度かマンボウの飼育に挑戦していた。私が確認できた資料上に残されている同館最古のマンボウ飼育記録は、1980年2月2日に入った4個体である。

 飼育員の方の話によると、マンボウ館の大水槽には過去に最多で20個体前後のマンボウを入れたこともあったとのこと。マンボウが水槽の中でうじゃうじゃしている様子を見てみたかった。マンボウが死亡したり新たに入ったりして個体数の増減はあるものの、マンボウ館での飼育展示が始まってからの約40年間、開館時は一度も水槽のマンボウが0個体になったことはないそうだ。

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マンボウ的魅力は?