「痛みを取って歩きたいと希望する患者に、人工膝関節置換術を検討します」

 80歳以上で受ける人の割合も増えているが、人工関節の寿命が20~30年に延びていることから、50代の若い人が希望する場合もあるという。

「ただし、活動度が高いと人工関節の摩耗やゆるみが早まることもあり、新しい人工関節への再置換術が必要になる可能性もあることを必ず説明しています」(福島医師)

 人工膝関節はあぐらや正座など、ひざを深く曲げる動作は困難になる。東京女子医科大学病院の岡崎賢医師はこう話す。

「通常、術後のひざの動きは、術前の曲がる角度に依存するため、症状が悪化してひざが硬くなる前に、タイミングを逃さず手術を受けることが大事です」

 術後はジャンプなど、衝撃が加わる動作は避ける必要があるが、ウォーキングやゴルフなどのスポーツは再開できる。

■より大きく自然に動かせる骨切り術、UKA

 自分の関節を残せるHTOと、悪いほうの片側だけ部分的に人工関節を入れるUKAは、術後のひざの違和感が少ない。

「いずれも、変形が中等度までで、正常な軟骨や靱帯が残っていることが適応の条件です。正常な部分の関節が残せるため、ひざの動きがより大きく自然です」(岡崎医師)

 HTOは、術後リハビリに長期間を要するが、約半年後にはスポーツに復帰できる。技術と経験の必要な手術のため、実施する病院は限られる。

 UKAは近年、長期の治療成績が向上して実施する病院が増えている。主流となるのはTKAだが、UKAを得意とする病院では一部の条件に合う患者に実施している。

「UKAは、適応条件の見きわめが重要です。変形が進行している人に無理をすれば1、2年後に残した関節や膝蓋骨の裏側に痛みが出てくることがあります」(福島医師)

「TKAかUKAか、UKAかHTOか、迷う症例は多くあります。3種類の手術をすべておこなっている病院であれば、患者に一番いい治療の選択肢を提案できるでしょう」(岡崎医師)

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