ポジティブ思考にもいい・悪いがある(写真 : TAKA-HERO / PIXTA)
ポジティブ思考にもいい・悪いがある(写真 : TAKA-HERO / PIXTA)
西野一輝さん(イラスト)
西野一輝さん(イラスト)

 あなたの周りにムダにやる気を下げてくる人物はいないだろうか? 経営・組織戦略コンサルタントの西野一輝氏は、こうしたやる気を下げてくる人物への対策を『モチベーション下げマンとの戦い方』(朝日新聞出版)として上梓した。今回のテーマは「いいポジティブ・悪いポジティブ」について。本書より抜粋、再構成して紹介する。

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 以前、地下足袋業界の跡継ぎとして会社を経営する若社長にお会いしたとき、「足袋の市場は厳しい状況ではないですか?」といまから思えば失礼な質問をぶつけたことがありました。

 すると若社長は「厳しいですよ」とあっさり厳しい事実を認め、「外国人観光客向けの土産として、新商品を開発中です」と答えてくれました。

 ここで「厳しくない」と回答すれば、うそを言ったことに自己嫌悪を感じるでしょうし、回答を聞いた私も「うそくさくて話が続かない」と感じていたことでしょう。

 なぜなら、人は、「無理をしてでも、ポジティブな態度でいなければならない」と感じたときにモチベーションが下がることがあるからです。

 たとえば、自分がきれいごとを言っている・言わされていると感じたとき。「目標はなんですか?」と聞かれたときに、いかにも相手が尊敬してくれそうなことを話していると、「見栄をはっているなあ」と自分で自分が嫌になってしまうものです。

 他にも社内の人間関係がよくないのに「君の職場の人間関係はどうなの?」と同僚から聞かれたときに「至っていいですよ」と答えたとき自己嫌悪を感じます。真実ではないことを言っているからです。

 だからといって、ネガティブな発言をしても自分の印象を下げるだけです。こうした場合どう答えたらいいのでしょうか?

 その答えはシンプルで、淡々と事実を受け止め、批判する言葉を慎重に選びながら話すことです。たとえば、「最悪」という表現を使うのではなく、「意思疎通が滞っているのが実情です。何とかしなければいけないと感じています」でいいのです。

 さらに「将来的には解消できる問題だと思います」と未来志向の発言を加えることも重要です。 課題があることは受け止め、「今後解消していい方向に持っていきたい」と発言することで、自分が嫌になるどころか、むしろ問題解決のためのモチベーションが高まります。

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西野一輝

西野一輝

西野一輝(にしの・かずき)/経営・組織戦略コンサルタント。大学卒業後、大手出版社に入社。ビジネス関連の編集・企画に関わる。現在は独立して事務所を設立。経営者、専門家など2000名以上に取材を行ってきた経験を生かして、人材育成や組織開発の支援を行っている。

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