井上はマラソンで2017年の世界陸上に出場した後、2018年のアジア大会で日本人32年ぶりの優勝。4年時に主将を務めて1区区間賞を獲得した中村は、2019年9月のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)で設楽、大迫を振り切って優勝。箱根2区で2年連続区間賞(渡辺康幸以来20年ぶり)の偉業を成し遂げた服部も同MGCで2位と好走し、箱根路を彩った大迫、中村とともに東京五輪のマラソン日本代表に決まっている。

 その他、箱根5区で3年連続区間新の走りを見せて多くのファンを作った「初代・山の神」今井正人(順天堂大、2007年卒)、1年時から箱根で3年連続区間新(3区、1区、7区)を達成した佐藤悠基(東海大、2009年卒)、3年時に5区で区間新記録(当時)の衝撃的な走りを見せて「3代目・山の神」となった神野大地(青山学院大、2016年卒)といった面々も、卒業後にケガやスランプに悩む時期がありながらも奮闘を続け、箱根ファンを喜ばせている。

 そして箱根の2区を史上初の1時間5分台で走って“学生最強”の名をほしいままにした相沢晃(東洋大、2020年卒)は、1万メートルの日本記録を更新して東京五輪に出場予定。現役大学生にも、田沢廉(駒沢大、2年)、三浦龍司(順天堂大、1年)といった卒業後も楽しみなスター選手が次々と現れている。「箱根至上主義」には賛否があり、改善点があることは確かだが、間違いなく「箱根から世界へ」という御旗は近年、より高く、目立つ位置に掲げられ、日本の男子長距離界の未来を明るく照らしている。