――カメラブランドとして、「オリンパス」という名前には非常に大きいものがあります。例えば、「ペンタックス」はリコーイメージングになったいまも「ペンタックスのカメラを買う」という気持ちなんですね。その一方で、社名とブランド名を別にしたパナソニックの「ルミックス」のような考え方もある。さらに同じマウントを持ったカメラシステムが「ミノルタ」から「コニカミノルタ」「ソニー」と変遷した例もあります。

片岡 そうですね。いずれにせよ、お客様に不安を与えるようなブランドチェンジをするつもりはありません。

よりシンプルに製品を作って、お客様に販売する

――昨今、カメラのマーケットが縮小するなかで新会社を立ち上げたわけですが、その経緯をお話しいただけますか。

片岡 まず、はっきりさせておきたいのは、この新社をなぜ設立したかという理由です。これまでわれわれは、オリンパスという会社の元で映像システムをつくってきた。そのシステムを持続可能にするには何がいちばんいい方法か、模索しました。そのうえで、オリンパスから独立してやっていったほうがよいという考えにいたったわけです。

 オリンパスの中にいれば、しょせんは事業部なので、オリンパスがカメラ事業を「やめる」と言えば、もうどうにもなりません。

 その背景にはやはり、カメラ市場の縮小があります。弊社だけではありませんが、現状のままで売り上げを伸ばして会社を成長させていくことはなかなか難しい。収益を出すためには費用削減、そのための構造改革が必要になります。

 オリンパスはいま、どんどん「メドテックカンパニー」、すなわち、医療機器中心の会社になっています。すると、医療機器メーカーとしてのモノづくりのプロセスが強化され、会社のルールとして映像事業もそれに従わなくてはならなくなります。

 つまり、カメラ市場の変動に合わせて組織の中身を変えていこうとしてもオリンパスの中ではなかなか難しい。例えば、サプライチェーンを軽くするにしても、オリンパスの持っている拠点を使わなければならないとか、制約がある。なかなか構造改革を大胆にできない。

 そんな構造改革が進まない状態では、オリンパスの中で事業を存続させていくことは難しく、お客様にご迷惑をおかけしてしまうことになるのではないか、という考えにいたりました。

 カメラ市場が縮小したのであれば、よりシンプルに製品を作って、それを届け、お客様に販売する。それができる構造をつくっていくにはオリンパスから独立して、自分たちの差配でいろいろなことをできるようにしたほうが事業を続けられる。そういうことです。

次のページ
みんな覚悟して、組織を切り出した