オンライン会見の様子(提供)
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北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表
北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今年最初の今回は、性犯罪に関する刑法の改正の論点と、いま注目されるセクハラ民事裁判の背景について。刑事と民事という違いはあれど、問題は根っこの部分でつながっているといいます。

【写真】「私たちは許さない」集まった女性たちは

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 いよいよ性犯罪刑法改正の議論が大詰めを迎えてきた。明治時代につくられたまま手つかずだった刑法が110年ぶりに改正されたのは2017年。その時に、「ここはまた改めて考えましょ」と残された課題が、去年4月から議論されている。それは性被害者の現実からみたら絶対に譲れない4点だ。

1:性交同意年齢13才は低すぎる。せめて16才に。
2:公訴時効、強制性交等罪10年は短すぎる。訴えるまでに時間がかかる性犯罪に、公訴時効はいらない。
3:同意のない性交は性暴力。当たり前のことを当たり前に語る刑法にしてほしい。
4:地位関係性を利用した性行為に罰則規定を。

 どれもが性被害者の現実から訴えられてきた切実な願いだ。適切な性教育がなされていない社会で13歳に同意能力を求めるのは酷だし、子ども時代に受けた被害を成人後に性暴力だと気がつくほうが、フツーだったりする。その時に公訴時効が過ぎていることに絶望する被害者は少なくない。また今の刑法では抗拒不能や、同意していないことが認められても、加害者に故意はなかったなどとして無罪になることもある。初対面の女性にテキーラを何杯も飲ませ意識を失わせた上で暴行しても無罪判決が出たのは110年前のことではないのだ。

 なぜ前回に変えられなかったのか。もし2017年に、地位関係性を利用した性行為に罰則規定がついていたら、この3年間で救われた被害者はどれほどいることだろう。教師や生徒、施設職員と利用者、上司と部下などの関係のなかで性交を断れず、訴えられない現実に苦しむ被害者の声を、約2年間にわたるフラワーデモで数多く聞いてきた。

 1月12日、福祉関係者によるセクハラ裁判の記者会見がオンラインで行われた。訴えられたのは障害者福祉業界の著名人である北岡賢剛氏だ。原告になったのは北岡氏のもとで働いていた女性2人で、北岡氏によるセクハラに苦しめられ、一人は精神的に追い詰められ退職を余儀なくされた。記者会見では、訴えることができなかった複数の被害者が過去にいるという話もあった。

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北原みのり

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北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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