原告2人は提訴するまでに、約4カ月にわたり社会福祉法人や北岡氏とのやりとりを続けていた。北岡氏が理事を務めていた社会福祉法人愛成会、理事長を務めていた社会福祉法人グローのうち、愛成会の評議員会はセクハラの事実を確認し、所轄庁である東京都に法令に基づいて申し立てを行い、組織改革を行った。その結果、理事の過半数を女性が占める組織に生まれ変わり、理事長には女性が就任した。一方、グローは、安全配慮義務を怠ったとして北岡氏とともに今回訴えられた。グローに確認したところ、北岡氏は理事長を昨年12月24日に辞任し、現在は一般理事として関わっているとのこと、また事実関係は裁判で明らかにしていくと、争う姿勢をみせている。北岡氏の代理人は2人の原告それぞれに対して2組ついているが、どちらもコメントは差し控えるとのことだった。

 1月14日、第1回口頭弁論が始まる。こんなふうに、被害者らが人生をかけて声をあげ、現実を一歩一歩変えてきた。この数年、本当にたくさん見てきた。そして驚くほど、全員が同じことを言うのだ。「他の女性に私と同じ目にあってほしくない。だから訴える」と。彼女たちの必死さに、法律が応えられる未来を見たい。

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

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北原みのり

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北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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