こうした知名度や話題性があったからこそ、RIZINでの那須川天心戦を実現できた。11月のRISEで「那須川天心挑戦者決定トーナメント」を勝ち抜き、正攻法で那須川との再戦を実現させた志朗とは対照的だ(2015年に那須川に敗れて以来、5年間無敗の20連勝でリベンジへひた走った鈴木真彦が目前の決勝で散ったのも切ない)。

 またK-1両国大会で1年半ぶりに復帰した芦澤竜誠もこうしたタイプ。かつては実力に見合わない言動に煩わしさを感じることもあったが、冷却期間を置いたからか、やや愛らしさを覚えるから不思議だ。復帰戦で島野浩太朗をKOした芦澤は「相手は鏡、自分がやったことが絶対自分に返ってくるから、いいことを言えばいいことが、悪いことを言えば悪いことが返ってくる」と心を入れ替えたように一夜明け会見で語ったが、こうしたタイプは多くのアンチを生んでも、どこかで逆にそういった層を引き込むことができるのかもしれない。

 思えば格闘技で近年最も成功を収めたフロイド・メイウェザーとコナー・マクレガーも、試合前は騒がしいことこの上ない。格闘技が“競技”であるのと同時に“興行”である以上、こうしたキャラクターを作り上げプロモーションを煽る方法は不可欠であるのだろう。思えばスポーツの域を超え20世紀を代表する1人となったモハメド・アリも、やはり言説かまびすしい人であった。

 プロはやはり話題となり、興味を引きつけてナンボか。SNS時代の現在、発信は自由だが、全て自分に返ってくる。だが、試合の結果や内容が伴わなければ、注目度もやがて淘汰され失われていく。そういう意味では自浄作用はあるが、やはり戦い、勝ってナンボの世界であり、あまり話題性が優先される世界になってほしくはない。

 ひとまず新庄剛志の年末参戦は無いようで一安心。そういったものをやるのであればテレビ番組など別企画で。発言で飛ばす選手たちは負ければ全否定と猛批判されるリスクを背負い、存在を懸け戦っている。大晦日は一年で最も格闘技が見られる時であるからこそ、話題性だけに寄ったものでなく戦うことで魅せてほしい。