また、「ドカベンプロ野球編」で岩鬼正美が、ダイエーと阪神が日本シリーズで対決する夢を見るシーンがあるが、作品発表時の96年にセパの最下位同士だった両チームは7年後、本当に日本シリーズで対決し、“正夢”となった。

 そして、超ど級とも言うべき“予言的中”が、西武・渡辺久信のノーヒットノーランだ。

 少年チャンピオンに「ドカベンプロ野球編」連載中の96年5月、渡辺がダイエー戦で完全試合を達成するシーンが描かれたが、現実世界でも、渡辺は6月11日のオリックス戦で、ノーヒットノーランを達成する。

 実は、渡辺は、同作品の中で、ダイエー戦で岩鬼に本塁打を打たれたことについて、「打たれるはずがない」とテレビのバラエティ番組の模擬裁判で訴えたところ、“原告”の言い分が通り、その見返りに作品中で完全試合達成が描かれることになったというしだい。

 そして、作品発表直後、高校で9回1死、プロで延長11回1死と二度の未遂歴のある渡辺が人生初のノーヒットノーランを達成してしまうのだから、まさに「事実は小説(漫画)より奇なり」である。

「ドカベン」で紹介されたルールの盲点を突く走塁が、愛読者の高校球児によって、現実の甲子園で再現されたのが、12年夏の済々黌vs鳴門だ。

 1点リードの済々黌は7回1死一、三塁、遊直で飛び出した一塁走者が帰塁できずに併殺となったが、それよりも早く三塁走者の中村謙太がホームインし、得点が認められた。

「ドカベン」では、夏の神奈川県予選の白新戦の延長10回1死満塁、微笑三太郎のスクイズが小飛球となり、一塁走者・山田が飛び出した際に、三塁走者・岩鬼がリタッチせずに本塁に突っ込み、ボールが一塁に転送されて併殺になる間に決勝のホームを陥れていた。

 小学生のときにこの話を読み、いつか実戦で生かそうと考えていた中村は、相手にアピールされたらアウトになることを承知の上で、迷うことなく本塁に突っ込んだ。この貴重な追加点がモノを言って、済々黌は3対1で勝利した。

次のページ
プロでも同様のプレーが…