今年の冬はゴキブリの「ホームステイ」にも注意(画像/PIXTA)
今年の冬はゴキブリの「ホームステイ」にも注意(画像/PIXTA)

アース製薬・生物研究課課長の有吉立さん
アース製薬・生物研究課課長の有吉立さん

 コロナ禍で迎えた初めての冬。在宅勤務と外出自粛による「巣ごもり」の増加で、家の暖房や加湿器を例年以上に稼働させている家庭は多いだろう。ただ、そうした生活環境による家の「温暖化」は、本来は寒さに弱いゴキブリにも変化を与えている可能性がある。

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 12月上旬の深夜。千葉県北西部のマンション4階に住む40代女性のAさんは、家族が寝静まった後に台所に寄ると、黒い物体がサーっとシンクの中を動くのを目撃した。

「凝視したらゴキブリで、うそでしょって。冬はいるわけないと思っていたので、びっくりしすぎて叫ぶ暇もありませんでした」

 殺虫剤を探している間に、どこかに隠れてしまった。またいつ現れるのか、Aさんは恐怖におびえているという。

 Aさんの家だけではない。専門家も、この12月にゴキブリが一般家庭に出たケースを確認しており、「冬の家がゴキブリに快適な環境に近づいている」と早めの対策を呼び掛ける。

「日本の家庭に出るのはクロゴキブリという種類で、冬は本来、動物の冬眠のように屋外やベランダの隅などで『休眠』します。ところが今年は12月に入ってから家で出たという話を聞くようになりました。マンションより寒いはずの一戸建てでも目撃例があり、驚いています」

 こう話すのはアース製薬・生物研究課課長の有吉立(ありよし・りつ)さん。100万匹のゴキブリ、数億匹のダニなどの害虫を飼う同社で、20年超の飼育歴を持つスペシャリストである。 

 確かに、Aさん宅も夫婦とも在宅勤務がほぼ定着し、土日祝日も家にいる時間が多いという。日中は無人だった昨冬に比べ、今は暖房と加湿器の使用時間が格段に増え、ポカポカ、ウルウルの状態が保たれている。

 有吉さんは、その環境変化に注目する。

「当社では、ゴキブリにとって快適で繁殖も早い、室温25~27度、湿度50~60%で飼育しています。年中暖かいのでゴキブリは休眠しません。今のご家庭は冬でも、特にマンションは暖かさを保ちやすく、さらに巣ごもりによって、当社の飼育環境と似てきていると感じます。人間が快適な環境はゴキブリにとっても快適なので、休眠しないというゴキブリの行動変化が起こる可能性も否定できないかと思います」

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冬に卵が孵化する可能性も…