昔から人間関係は難しい(イラスト/桔川伸)
昔から人間関係は難しい(イラスト/桔川伸)

 ビジネスや会合などで使われる、かしこまった言葉。意味を深くは理解していないけど、なんとなく使っているということはないでしょうか。由来や漢字の意味を知って自在に使いこなすための、漢字うんちくを紹介します。

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1.慚愧(ざんぎ)
~自己を恥じてその気持ちを外部に示す

 反省し、謝意を表すときに「慚愧にたえない」ということがあります。「慙愧」とも書きます。もともとは仏教用語で、「慚」は自己に対して恥じること、「愧」は外部に対してその気持ちを示すことです。そこから、自分の言動を反省して恥ずかしく思うことを「慚愧」というようになりました。

2.拙速(せっそく)
~出来が悪くても早いことは遅いよりもいい!?

 「拙」には「たくみでない」「へた」という意味があります。「速」は「はやい」意味なので、合わせて「仕上がりがへたでも、やり方が早い」という意味です。「拙速な判断を避ける」などのように、あまりいい意味では使われませんが、「巧遅は拙速に如かず」という言葉もあります。「巧遅」は「拙速」の反対で「出来はいいけれど遅い」という意味です。多少出来が悪くても遅いよりはいいということです。即断即決の重要性を説く言葉でもあります。

3.御見逸れ(おみそれ)
~誰だか思い出せないときに失礼を詫びる挨拶

 相手のことを見直したときなどに、「御見逸れしました」のように使われます。「見逸れる」の名詞形に丁寧語の「御」がついた言葉です。漢字から想像できるように「見逸れる」は、「見過ごす」「見忘れる」という意味です。本来は、面識があるのに会っても気づかなかったり、顔は覚えているけれど誰だか思い出せなかったりしたときの、失礼を詫びる挨拶です。

4.如才ない(じょさいない)
~神が「在る」が「如く」振る舞う「如在」から変化

「如才」はもともと「如在」と書き、神が眼前に「在る」が「如く」、つつしみかしこまる意味でした。そこから形ばかりの敬意を表すようになり、さらに手ぬかりや不作法という意味に転じました。また、漢字も誤って「如才」と書かれるようになりました。否定を伴った「如才ない」は、手ぬかりがなく気が利いているといういい意味ですが、そつがなく要領がいいことを皮肉っぽく表すこともあります。

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「うらさびしい」は「裏」ではない