日本代表の森保一監督 (c)朝日新聞社
日本代表の森保一監督 (c)朝日新聞社

 2020年のサッカー日本代表の活動が終了した。コロナ禍での大幅なスケジュール変更を強いられた中、実施できたのは海外組のみの欧州遠征4試合。その結果、2勝1分け1敗という勝敗よりも、森保一監督の手腕、無策ぶりに改めて批判が高まった。

 守れても攻め手がなかったアフリカ勢との2試合、退屈な時間を過ごしたパナマ戦の前半、そして選手交代がことごとく裏目に出たメキシコ戦の後半……。特に今年の集大成となるはずだったメキシコ戦では、世界との距離が縮まっていない“現実”を見せつけられた。チーム戦術が一向に昇華される気配がなく、試合中に書いたメモが有効活用されていると思えない。そもそものところで、森保監督の「やりたいサッカー」が見えて来ないのが問題で、指揮官の口からこれまで発せられた「選手の自主性」、「様々な状況への対応力」、「4バックと3バックの併用」、「GKを含めたビルドアップ」、「前線からのプレッシング」などの方向性も、いずれも中途半端な印象しか残せていない。

 過去の代表チームを振り返ると、オフト監督時代には「トライアングル」や「アイコンタクト」という言葉が多用され、トルシエ監督時代には「フラットスリー」の独自戦術を徹底、オシム監督時代には「人もボールも動くサッカー」、「日本化」というコンセプトがあった。さらにザッケローニ監督は「ポゼッション&コンビネーションの攻撃サッカー」を追い求め、後任のアギーレ監督は「攻守の切り替え」、ハリルホジッチ監督は「デュエル」、「タテへ速さ」を選手たちに強く要求した。

 その信念に基づき、オフト監督は無名だった森保一をボランチとして抜擢し、トルシエ監督はフラットスリーの中央に森岡隆三、右サイドに本来ボランチの酒井友之や明神智和をコンバート。オシム監督はジェフ時代の教え子である阿部勇樹、羽生直剛、巻誠一郎や鈴木啓太を重用し、ザッケローニ監督は本田圭佑、長谷部誠に全幅の信頼を寄せ、ハリルホジッチ監督の下では原口元気や久保裕也、井手口陽介がハリルの申し子と言われた。

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森保Jの戦術上の“キーマン”は?