「(女子W杯のベスト16敗退に)選手たちも気持ちが落ちる部分があったでしょうけれど、自分の中で足りない部分へ前向きに、逆に通用した部分に対しては自信を持って、取り組んだ」と高倉監督。

 チームコンセプトはそのままに、女子W杯で得た経験をところどころで生かしながら、秋以降の5試合を無失点の全勝。いい形で2019年を締めくくった。

 年が明けた3月、なでしこジャパンはアメリカで行われたシービリーブスカップ(アメリカ)に参加した。ここで、スペイン(●1-3)、イングランド(●0-1)、アメリカ(●1-3)に3連敗を喫した。大きく分けて敗因はふたつ。第一に、対戦相手がシーズン中であり、こちらはオフ明けという、彼我のコンディション差。そして、ゲーム回しの拙さである。

「(オフ明け最初のスペイン戦と続くイングランド戦に比べれば)アメリカ戦では、だいぶコンディションが上がって、自分たち本来の戦いができたと思います。選手は試合の中で成長をしようとしているんですけれども、決して犯してはいけないようなミスも出ました。やってはいけない時間帯、やってはいけない場所で、やってはいけないプレー……。強豪は、少しの隙でも、しっかりと決めてくる。勝負に対して脆いところを見せてしまい、調子が悪いなりに試合を組み立てていく『したたかさ』がまだないなと確認しました」

 女子W杯時にはいなかった選手も加わった編成で、イングランドや女王・アメリカを振り回した時間帯もあった。課題と手ごたえが浮き彫りになり、「収穫が大きい大会だった」(高倉監督)。世界との距離を再認識し、本番まで残すところ半年足らず、のはずだった。

 ところが、アメリカから帰国したなでしこジャパンを待っていたのは、新型コロナウイルスの感染拡大で、一変した空気。緊急事態宣言が出され、社会の動きが止まりかけた時には、高倉監督も「平和で健康な社会にいない限り、スポーツはできないんだな、と強く感じました」。そして、東京五輪の延期が決定される。出鼻をくじかれた格好にはなったが、指揮官は「若い選手が多いので、時間をもらったと考えることにした」。新しいカレンダーに合わせて、強化を進めていく。

次のページ
選手選考で重要視していることは?