再開されたなでしこリーグでは、個々の選手の状態に注意を払った。やはり、コロナ禍で体調をキープするのは困難で「身体が大きくなった」「強くなってきた」と感じさせる選手がいる一方で、コンディションが落ちてしまっている選手もいた。勝って加速し、躓くと再上昇できない、チーム状況と勝負の難しさを外から観察し、「やっぱり、チームは生き物だ」と感じた。

 そして、昨夏から今春までの候補だけでチームを固めるのではなく、調子のいい選手をピックアップし、短い期間でもチームが作れるプランに取り組んでいる。10月のキャンプでは、久しぶりでもあり、クロスからの攻防などをチェックしながら、コンセプトを確認した。なでしこリーグで好調なクラブから選考された選手が多かったが、単に「勝っているチームの選手」を選んだわけではない。むしろ、逆境下で発揮する底力に注目する。

「強いチームでいいパフォーマンスをするのは普通。チームの調子が良ければ、選手自身の調子も勝手に良くなるものです。そうではなくて、勝てない中で何ができるのか。チーム状態が落ちているときに、どうやって自分とチームを立て直していけるか。そこに代表選手としてのパフォーマンスを見ていますし、そこが選手としての真価を問われるところではないかと思います」(高倉監督)

 女子W杯不出場組では、レギュラー復帰後、チーム成績を劇的に向上させたジェフユナイテッド市原・千葉レディースの山根恵里奈や、開幕2戦連続で虎の子の1点を挙げ、ここまで8勝のうち7戦でゴールを挙げた田中美南らが選出されている。ただし、個々の選手の特徴は生かしながらも、チームとして目指す方向性を変えるつもりはない。

「『日本は、日本の武器で、世界のどのチームにもまねができないサッカーを目指す』と言っています。そのためには判断力、組織力がちょっとでも狂ってはいけないと思いますし、パス、コントロール、立ち位置、自分の動き出すタイミングなど、判断のクオリティーも高めていかなければいけません」(高倉監督)

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WEリーグ開幕で女子サッカーの未来は明るい?