今年のドラフトで大きな注目を集めている近畿大・佐藤輝明 (c)朝日新聞社
今年のドラフトで大きな注目を集めている近畿大・佐藤輝明 (c)朝日新聞社

 いよいよ明日に迫ったプロ野球ドラフト会議。事前報道などを見てみると、ここへ来て一番人気になる可能性も出てきたのが佐藤輝明(近畿大)だ。8月末に巨人が編成会議で『即戦力』の『パンチ力』のある、『外野手』を最優先で狙うということを明言し、それに当てはまるのが佐藤ではないかということになったのが情報戦のスタートだった。

【写真】巨人にドラフト1位で入団も25歳で引退した投手はこの人

 この一報が出てから佐藤の人気は高まり、ソフトバンクオリックスが1位指名を公言し、巨人も25日に1位指名を表明。阪神西武も佐藤1位をにおわせており、全て入札となれば5球団競合となる。もし実現すれば大学生野手では岡田彰布(1979年阪神1位)の6球団に次ぐ記録だ。しかし、佐藤のここまでのプレーぶりを見る限り『即戦力』として考えるのは大いに疑問が残る。

 4年春のシーズンが中止になったのにもかかわらず、関西学生野球でリーグ新記録となる14本塁打を放った長打力は確かに素晴らしいものがあり、過去に打率3割以上を3度記録しているが、マークが厳しくなった昨年秋の打率は.188でこの秋も.257と決して高いとは言えない。三振の多さも気になるところだ。

 分かりやすい実績と飛距離に加えて、足や肩などの運動能力もあることが評価の高さに繋がったと考えられるが、どちらかと言えば『未完の大器』に分類される選手である。確実性を身につけて柳田悠岐(ソフトバンク)のようになれるのか、それともホームランは出ても確実性が著しく乏しいランス(元広島)のような選手になるのか、球団や指導者によって左右される危うさを秘めていることは間違いないだろう。

 ただそんな危うさを秘めていても、化けたら面白いというスケールの大きい選手に魅力を感じることもまた事実である。今年の候補の中では投手であればシャピロ・マシュー・一郎(国学院栃木)、嘉手苅浩太(日本航空石川)、内星龍(履正社)、河村説人(星槎道都大)、佐藤蓮(上武大)、石田駿(BCリーグ・栃木)などがそのタイプに当てはまる。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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