上出:スタジオジブリの作品って、読後感としてわかりやすくはないじゃないですか。それなのにこれだけ多くの人に受け入れられているのは、どういうことなんでしょうね。あれはなんなんですか? すごくないですか?

武田:ですよね。『崖の上のポニョ』のデカい巨大魚、『となりのトトロ』のマックロクロスケも、これって一体なんなんだ、のまま放置されている

上出:なのにみんながおもしろいと思えるのは。

武田:本当はみんな、意味不明なものを許容する力があるのに、作り手がそれを勝手に諦めているというか、どうせ、わかってくれないっしょ、と思っているのかもしれない。

上出:子どもは意味不明なものを楽しむ感性が残っているとも言いますよね。

武田:よく言われますね。絵本の物語を作るのはとても難しく、余白がないと子供がおもしろがってくれない、なんて聞いたことがあります。絵本の名作には、話に飛躍があったり、接続がはずれていたりするようなものが多いと。

上出:それはおもしろい話ですね。

武田:なめてかかるとダメなんでしょうね。

上出:そう考えると、やっぱり教育ですよね。

武田:ですね。

上出:小学校中学校を通して、わからないということに対してすさまじい恐怖心を植え付けられてきた気がします。一つの正解が存在していて、正解をわかっていないことは叱責されるべきことである、という教育になっていますよね。

武田:今日の結論は、教育の見直しと、そして、景気回復ということで。

上出:出ました。そして、武田さんのつぶさな観察眼がヤバかった。ツイッターに上げたちっちゃい動画の端に映っていたものまで見られているとは。

武田:いやらしさ全開でやってまいりましたので(笑)。(構成/長瀬千雅)

■武田砂鉄(たけだ・さてつ)
1982年、東京都生まれ。出版社勤務を経て、2014年からフリーライターに。新聞への寄稿や、週刊誌、文芸誌、ファッション誌など幅広いメディアで連載を多数執筆するほか、ラジオ番組のパーソナリティとしても活躍。9月28日スタートの新番組『アシタノカレッジ』(TBSラジオ、月~金、22時~)の金曜パーソナリティを務める。

■上出遼平(かみで・りょうへい)
1989年、東京都生まれ。2011年株式会社テレビ東京に入社。『ハイパーハードボイルドグルメリポート』シリーズの企画、演出、撮影、編集まで番組制作の全課程を担う。空いた時間は山歩き。