優勝したミルクボーイだけでなく、準優勝のかまいたちも一気にメジャー化して人気芸人の仲間入りを果たした。さらに、3位のぺこぱも大ブレークして、8位のすゑひろがりずもファンが急増。7位のオズワルドや10位のニューヨークもテレビで見かけることが多くなった。

 だが、そんな賞レースだけを目標にするのは芸人にとってリスクがある。賞レースで決勝に進むには、数千組の出場者の中で上位数組に入らなくてはいけない。しかも、決勝に出たからといって成功するとも限らない。その意味で「賞レースより日テレ」というフワちゃんの理論には一聴の価値がある。

 なぜ他の局ではなく日テレなのか。それは、日テレが若者にも一般大衆にも最もよく見られている局だから、というのが1つ。そしてもう1つは、日テレのバラエティ番組では「縦の連携」が強いため、1つの番組で結果を出すと、ほかの番組にも呼ばれることが多くなり、そこで相乗効果によって人気が跳ね上がっていくことがあるからだ。

 典型的な例はブルゾンちえみだろう。彼女は日テレの『おもしろ荘』に出演して話題になり、その後は『しゃべくり007』『行列のできる法律相談所』など日テレのバラエティ番組を中心に活動。そこで大ブレークを果たし、『24時間テレビ』でもマラソンランナーに選ばれた。

 フワちゃんも同じだ。日テレの『ウチのガヤがすみません!』で指原莉乃のイチオシ芸人として登場して、それがきっかけで特番にも呼ばれるようになった。それ以降は日テレの主要なバラエティ番組をひと回りしている。このルートに乗れるかどうかが重要なのだ。

 日テレの番組は視聴率を取るための土台作りがしっかりしている。良くも悪くもタレントを型にはめて、その人の面白さを引き出していく。だからこそ、そこに一度ハマると一気に波に乗ることができる。

 もちろん、日テレで結果を出せば売れるとはいえ、それは賞レースで結果を出すのと同じくらい難しいことであるというのも事実だ。どちらの道も険しいものであるには違いないが、日テレはテレビ業界の代表のようなものであるため、そこで成功すれば他局でも引っ張りだこになる。フワちゃんの残した「賞レースより日テレ」という言葉は紛れもない真理なのだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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